六神通

六神通とは

六神通のイメージ

六神通(ろくしんつう)とは、仏教における6種類の超人的な能力、すなわち神通力のことを指して言います。六通とも言われ、如来や菩薩などの仏尊は皆持っている力だとされています。この6種類の能力の詳細は、以下の通りになります。

1. 神足通(じんそくつう)

自分の行きたい場所に行ける能力になります。どのような障害があっても先に進める力で、たとえば水の上を歩き、空を飛び、壁をすり抜けることもできる能力とされています。まさに神の足を持って行動出来るほどと言えます。

2. 天耳通(てんにつう)

世界のあらゆる音を聞き取ることが出来る能力です。普通は聞こえないほど小さな音でも、ハッキリと聞くことができる超人的な耳と言えます。

3. 他心通(たしんつう)

他者の心の声が聞こえる能力になります。相手が何を考えているのか、心の奥底に抱く気持ちが手に取るようにわかります。自分のことばかりに捉われていると、他者の心は読めないものです。無心であるからこそ、発揮できる驚異的な能力とも言えるでしょう。

4. 宿命通(しゅくみょうつう)

自分や他者の過去の出来事がすべてわかる能力です。過去どころか、前世さえもわかり、輪廻転生に関するすべてを知ることが出来る能力とも言えます。

5. 天眼通(てんげんつう)

「てんがんつう」とも読みます。普通の人が見ることのできない事象を、ハッキリと見ることができる超人的な眼力のことです。または修行を積んだ者が、過去、現在、未来のすべてを見通すことのできる能力ともされています。

6. 漏尽通(ろじんつう)

煩悩が尽きて、生まれ変わる必要がないときに得られる能力で、つまり悟りの境地に達した者だけが会得出来る能力です。煩悩が溢れて漏れてくる者には、漏尽通の能力を得ることは出来ないとされます。漏れてくる煩悩がなく、煩悩が尽きているから漏尽通と言うのであって、この能力により世の理のすべてを認識することが出来るとされます。

六神通の言い伝え

そもそも、六神通はどこから来た言葉(能力)なのでしょうか。六神通について『沙門果経』によると、マガタ国(古代インド16大国のひとつ)の王様がお釈迦様に、「仏教の修業にはどのような果報があるのか」と問いかけたとき、お釈迦様が以下のように答えたのが始まりとされています。

「自身の身体が元素からなり、父母から生まれ、意識が身体に依存している状態であると悟り、かつ、思考で成り立つ身体も持つことが出来ること(肉体はないが意識だけで生きる)。これらを修業で習得すると、超能力を体験することが出来る。すなわち、
『山を越えたり、城壁をすり抜けたり出来る』
『神と人間の声を、いつでもどこでも聞くことが出来る』
『他者の心の善悪を、すべて知ることが出来る』
『自分の総ての過去を想起出来る』
『生命ある者の、幸不幸や生まれ変わりを知ることが出来る』
『欲望、生存、無知の苦しみから解放され、解脱出来る』
となり、修行の果てにこの能力を得ることが出来るのである」

とお釈迦様は王様に説いて聞かせたのでした。つまり、この果報こそが、今の六神通の神通力の根本であり大元なのです。