物霊

物霊とは

物霊のイメージ

物霊と呼ばれる霊が存在します。基本的には「物質」に憑く「霊」を意味しています。日本では古くから「九十九神(つくもがみ)」と呼ばれる、さまざまな物に憑く霊が存在してきました。ただし、その認識には宗教的や精神的な立場によって、複数の捉え方があるようです。

この世に存在するあらゆる物にあらかじめ憑りついていると考えることもあれば、様々な状況によっては憑りつく可能性があるとされることもあります。物に霊が憑りつくことで、本来物質が持つことのない意志がそこに生まれ、それが自然界で、または物同士や人に対しても影響を与えることがあります。物霊は、古くから存在してきた霊ですが、現代社会には、さらに多種多様な物質があふれており、そのため、物霊の数やその姿も増加していると考えられます。同時に、物霊の性質にも幅が生まれ、正しく認識し対応するのが難しい存在ともなってきています。

時間を経て物霊となったもの

物霊として古くから認識されてきたものに九十九神があります。これは「付喪神」と書くこともあり、長い時を経た物質に霊が憑りつき神格化したもののことです。ほかの物と比べてより長く存在してきた物、人の祈りや念などを強く受けたものなどがなりやすく、川や山に時を経て存在してきた自然物、分かれ道などに長く存在してきた道しるべ、神社などの神に近い場所で使われてきた道具や飾り、職人によって代々引き継がれてきた道具など、時を経たことで霊的な存在になった物が付喪神と呼ばれ、そこに憑りついている霊を物霊と呼びます。

事件をきっかけに物霊となったもの

同じく川にある石ころでも、大きな災害によって多くの命が失われた場所にあったものなどは、それほど長い時を経ていなくても物霊が憑りつくことがあります。例に挙げた川の石だけでなく、事故が起こりやすい崖路や交差点などにも物霊は生まれやすくなり、その近くにあるものに憑りつくことがあります。また、家などの不動産、車や工芸品、宝飾品などにも、事件や事故をきっかけに物霊が憑りつくことがあり、事故物件として扱われたり、特別な取り扱いを必要とする物として、専門家のもとに持ち込まれたりするものもあります。

思念が物霊化したもの

誰かによって大切にされていた品、逆に強い怨念を受けた物などに霊が憑りつくこともあります。この場合も、100年といった長い時を経てはいなくても、非常に強い思念を受けたことがきっかけとなって物霊が生まれます。お気に入りの人形、結婚指輪などには、所有者と時には贈った側の者の思念も強く含まれています。これが物霊となって人形や指環などに憑りつき、持ち主に影響を与えることがあります。また、呪いに使われた場所や道具など、人の念を受けやすいパワースポットにある物なども、物霊が憑りついているので、むやみに触れたり、持ち帰るなどの行為は、物霊の怒りを買う恐れがあります。

好影響や悪影響を与える物霊

物霊は、その性質を見極め正しく扱うことで、その持ち主に好影響を与えることもあります。先祖が大切に守ってきた家、思い入れのある庭木、衣類、装飾品などに憑りついた物霊は、正しい後継者が引き継いで、正しく扱うことで、守護霊の働きをすることもあります。また、道具類に対しては、感謝や尊敬の念を持って扱うことで、そこに憑りつく物霊が危険回避や能力の上達などにつながる働きをしてくれる可能性もあります。

好影響を与えるくれる物霊もあれば、一方で悪影響を与える物霊もあります。非常に強く深い怨念がしみついた道具や場所などは、簡単には浄化されません。その道具の持ち主や使い手、その場所を通りかかったもの、そこにある自然物などのすべてを巻き込んで、悪影響を与えることがあります。例としては、そういった道具を所有することで、進級や昇級といった社会的な不運、ケガをさせたり事故を引き起こしたりといった肉体的な不運などを呼び込みやすいといわれます。また、先祖から受け継いだ物など、本来ならば好影響を与えるはずの物霊も、その扱い方を間違えれば、一転して悪影響を与える物になりえます。

物霊の扱い方

物霊は、それぞれが「こう扱ってほしい」という望みをもっています。それを理解することが大切です。幸せをもたらすというわれる岩があっても、それを利己的にわが物にしようと掘り起こして持ち帰れば、それは不幸をもたらす岩になってしまうのです。特に時を経て物霊が憑りついた物にとって、今そこにある場所が定位置であり、そこから動かされることを嫌います。また、事件によって物霊が憑りついた物は、専門家による霊視を行わなければ、その存在の有無も対応方法も分からないことが多いでしょう。思念が憑りついた物も同様です。自分勝手な目的のために物霊を利用しようとすれば、しっぺ返しに見舞われます。また、良かれと思って行ったことであっても、結果として悪影響が生まれれば、それは正しい扱い方ではなかったということです。

物霊は、時間が生み出すこともあれば、突発的な事故などが生み出すこともあります。こまた、思念が生み出す物霊も我々に大きく関係してきます。そこに深い怨念や強い願望がなくても、例えば、いつも使っている万年筆を大切にすること、通勤通学に利用する自転車に感謝の気持ちを持つことでも物霊は生まれ、その持ち主に影響を返してきます。古い物も新しい物も、「たかが物」という考えを捨て、物とそこに憑りついているかもしれない物霊、そこに生まれるかもしれない物霊の存在を感じながら使い接することで、自分に幸運を呼び込むことにもつながることがあるのです。