アニミズム

アニミズムとは

アニミズムのイメージ

信仰のあり方は多様にあり、何をどう崇めるかもそれぞれです。信仰という行為が人にとってどのように作用し、生き方に影響していくのか。そこが問われるわけです。アニミズムもこうした信仰に対する考え方の一つで、自然界に存在するあらゆるものに霊魂があり、それを信仰の対象とするという原始宗教における神秘的信仰形態です。この世に存在するものにはすべて生命や魂が宿っているというアニマティズムという思想から発展したもので、万物有魂論とも言われます。19世紀後半にイギリスの人類学者、E.B.タイラーが自身の著書『原子文化』で提唱し広まっていきました。日本では精霊という形で万物に宿るものとして捉えられ、精霊信仰という訳し方をされています。アニミズムにおいてはものには意志や魂があり、諸現象はこうした意志のもとに起きているとされます。ものが発することをこちらで慮り、何を意図しているのかを推し量ります。それが敬う形になり、信仰になるというものです。ラテン語のアニマ(anima)という語に由来し、霊魂という意味に起因しています。

アニミズムは多神教?

自然の事象を始め、アニミズムの信仰の対象は多岐にわたります。いわば人々の心が感銘を受けたものは信仰の対象となります。アニミズムの思想では神としても捉え方も多様となります。こうした考えを一つの神を崇める宗教は批判する視点があり、この立場からアニミズムをペイガニズム(異教)と称し、侮蔑して使うこともありました。

ものの奥にあるものを感じ取る

アニミズムは、目に見えるものをそのまま神として崇めるわけではありません。あくまでもものに宿る魂や精霊という目に見えないものの存在に対しての信仰です。石が転がった先に何が起こり、それは何を意図しているのか、探った先に石に宿る神の存在が見えてきて、信仰につながるのです。いわば感じ取ることに信仰の始まりがあり、人間が持つ思考力や感受性がものをいう信仰と言えるでしょう。現代のスピリチュアルに通じるものがあり、意味を求めそこからのメッセージを感じ取ることから始まります。

日本ではどんなものにも神はいるとされ、この考えがアニミズムに通じるものがあります。それを象徴したものが神社で、ご神体とされるものは神として崇められています。ものに宿る精霊に強い力があると信じられ、崇めたたえることによって自分たちの命が守られ、暮らしの安寧が与えられるとして祭りという儀式で表現するという習わしが各地で行われてきたのです。神のあり方に括りをせず、多様な考えが日本には根付いていたのです。神、仏、そして海外から伝来したキリスト教など紆余曲折を経て現代の日本に宗教という形で定着しています。

何を信じるかは自分次第

こうしたアニミズムの考えから敷衍して自分にとっての神という存在を作ることができるのではないでしょうか。手を合わせ、祈る気持ち。それだけで信仰というふうに捉えてもいいのです。それが自分の心の拠り所になり、生きることを勇気づけてくれる存在になり得るのです。好きなキャラクターグッズを部屋に飾り、その世界観に魅了され、惹きつけられて夢にも出てくるようになる。そのキャラクターに宿る精霊とあなたは通じ合えていると言えるかもしれません。アニミズムの精神は誰でも持っているのかもしれません。それで自分の人生が豊かになれればそれでよいのではないでしょうか。人生で直面する困難、乗り越えるべき壁と対峙したとき、支えてくれるものにすがりたいという気持ちは誰もが理解できるものでしょう。神は自分で見つけてもいいのです。

アニミズムは原始的な宗教観念であり、日本の八百万の神々とも通じるところがあり、日本人には理解しやすいものでもあります。そこにあるのは畏怖の念です。神は自分とは次元が違うところに存在するもの。目に見えぬ力に魅了され、敬意を示し、常に向き合いそこから自分を律し人生を形作っていくのです。そんな神の存在を見つけてみてはいかがでしょうか。