修験道

仏様の心を取り戻すための修行

修験道のイメージ

修験道とは、山の中に入り修行を行うことです。古来より、国土が山々に覆われた日本では、四季折々に変化する大自然と人々は結びついてきました。そうした背景から、日本では「山には神々が宿る」と信じられています。山自体を御神体に見立てて拝む以外の手段として、御神体である山に入り修行することで、悟りを開こうとしたのです。人はもともと、仏様と同様の性質を持っているとされています。しかし、煩悩によって、本来の性質が曇ってしまうことは避けられません。修験道は、困苦を忍び心身を修練することで、煩悩を取り払い、清らかな心を取り戻すことを目的にしています。

修験道の歴史

修験道の始まりは、今からおよそ1300年前の奈良時代。「山には神様がいる」と信じる山岳信仰の考え方に、仏教の行脚(修行のために諸国を歩くこと)や、道教の入山修行が影響を与え、山に籠って修行をする人が増加しました。7世紀から8世紀頃に、大和の葛城山で活動していた役小角(えんのおづぬ)もそのうちの一人で、彼が修験道の開祖だと言われています。

平安時代に入ると、入山修行をする人はますます増え、密教系の信者も修験道に参加するように。平安時代末期になると、密教や陰陽道、民間信仰などの要素も加わり、神仏習合の日本独自の修験道が誕生したと伝えられています。

修験に打ち込む山伏たち

修験道に励む者たちは、山に伏して修行をすることから「山伏(やまぶし)」と呼ばれます。修験道の経典は大自然。険しい山道を登り、身体だけではなく、精神を研ぎ澄ませて大自然と心を一つにするのです。修行で着用する衣服は宗派によって異なりますが、多くが「鈴懸」という法衣を身につけます。「鈴懸」と肩にかけている「結袈裟(ゆいげさ)」を見れば、どこの宗派に所属しているか、その人が行者なのか僧侶なのか、どれくらい修行を行っているかなど、様々な情報を得ることができると言います。山伏の服は、少しの雨なら凌ぐことができ、身体を冷やすこともありません。現代のようにレインコートがなかった時代から受け継がれた、山歩きに適した修行着なのです。

日本三大修験道

修験道の霊山は、日本全国に点在します。その中でも、「日本三大修験道」と言われる3つの霊山をご紹介します。

大峰山(奈良県)

奈良県南部に位置する、日本百名山の一つです。1980年には、ユネスコ生物圏保護区にも登録されました。役小角(えんのおづぬ)が開いた修験道発祥の地と言われており、一部の区域では、現在も女性の入山を禁止しているところがあります。

出羽三山(山形県)

出羽三山は、月山・羽黒山・湯殿山の総称で、県内有数のパワースポットです。それぞれの山が現世・前世・来世という「三世の浄土」を表し、この三山を巡礼することは、死と再生をたどる「生まれ変わりの旅」と言われています。

英彦山(福岡県・大分県)

二県にまたがる霊山で、日本百景・日本二百名山の一つです。象徴的なのは、樹齢1200年を超える「鬼杉」。この杉の木は、鬼が英彦山から退散する時、持っていた杉の杖を地に突き刺したものが大きくなったものだという伝説があります。

全国の霊山では、修験道体験を受け付けているところもあります。興味がある方は、ぜひ探してみてください。