インストゥルメンタル・トランスコミュニケーション

故人の主体は、死んだ後も存続するか?

インストゥルメンタル・トランスコミュニケーションのイメージ

インストゥルメンタル・トランスコミュニケーション(Instrumental Transcommunication、以下ITC)とは、電子機器によって死後の世界との交信を試みる研究のことです。「電子音声現象(Electronic voice phenomenon)」とも言います。この研究の目的は、亡くなった人の意識や主体は、死後も存続するかどうかを調べること。この「死後意識存続」に関する研究は、他にも臨死体験前世療法などがありますが、ITCはそのいずれとも異なる領域だと言えます。

ITCの歴史

ITCが初めて確認されたのは、1901年のことです。アメリカの民俗学者ヴァルデマール・ボグラスが、シベリアのシャーマン(チョウクチ族)が叩くドラムの音を録音したところ、複数の声が確認されたと言います。1920年代には、発明家トーマス・エジソンが死後の世界との交信を行う機器の研究開発を開始。彼は、アメリカのサイエンス誌のインタビューにおいて、「もし私たちの人格が死後も存続するなら、(中略)この世を去った人たちがこの世に残された人たちとの通信を望むだろうと結論付けるのは妥当なこと」だと答えています。しかし、彼は機器の完成を待たずに死去してしまいます。その後も録音機に“見えない存在”の声が偶発的に混入する事案が多数報告され、研究者による著書が発表されると、多くの反響を呼びました。

1980年代以降になると、ITCの研究が欧米諸国を中心に大きな広がりを見せます。そして1986年、あの世から画像を受信することに成功した者が登場します。ドイツの実験者クラウス・シュライバーがテレビをつけたところ、亡くなった愛娘の映像を受信。以後、「死後の世界の風景を受信した」という報告が続々と寄せられました。

ITCで霊界と交信する

それでは、ITCでどのように死後の世界と交信するのでしょうか。以前、日本においてITCの講演会が行われた際、ブラジルの研究者が公開教授した方法をご紹介します。用意するものは、ラジオ3台、赤外線灯と紫外線灯(直視すると失明の危険があるので、弱い紫外線が出るもの)、そして録音機(通常のマイク)です。

まず、ラジオ3台をそれぞれFM、AM、3 ~ 30MHzの周波数に設定して、ホワイトノイズ(「ザー」という雑音)を発生させます。安定した細かい雑音を発生させるために、各放送局より遠い周波数にチューニングしましょう。こうすることで、霊界がノイズのエネルギーを利用して音を作りやすくなります。ラジオを並べたら、録音機のマイクから少し離れた部分に赤外線と紫外線が当たるように点灯させます。これでICT装置は完成です。あとは、15分、30分と時間を決めて録音し、根気強く音声が録れているかを確認し続けます。

ITCは、電子機器を使用するので、霊媒と違って誰でも死後の世界と交信できると期待されました。しかし、交信が成立するためには、様々な条件が必要です。霊的なエネルギー場が必要であること、1人で行う場合は本人の霊的な素質が要求されること、複数で行う場合は、否定的な人が一人もいないグループで、メンバーの意気がぴったり合っていることなど…。誰でも死者と話ができる世界になるためには、まだまだ先は長いようです。