八大地獄

八大地獄とは

八大地獄のイメージ

死後の世界には、天国と地獄の両極しかないと思っている人が多いのではないでしょうか。罪人は地獄に堕ちるのはほとんどの宗教で共通認識とされていますが、仏教ではさらに地獄にはレベルがあり前世で行った悪事の大きさや回数によって地獄が分かれているとされています。こちらでは、八大地獄と呼ばれる地獄の種類について解説します。今の生き方に自信がない人や罪悪感を抱えている人は、戒めとして参考までにご覧ください。

地獄とは?|不浄な心を表す世界

地獄は仏教で「六道における最下層の世界」を意味し、生前に大罪を犯した者が辿り着く場所とされています。仏教のみならず、イスラム教でも地獄は悪人が苦を受ける世界を示すのです。ヒンドゥー教ではヤマ神という神が裁きを下すとされており、地獄を表す地下世界を「Naraka(ナラカ)」と呼びます。最下底や最悪な境遇を意味する「奈落」の語源は、まさにヒンドゥー教の地獄からきているのです。なお、仏教では人間の心を表す世界があると言われており、地獄は死後の最下層と解釈するほかに心の不浄を示します。キリスト教で地獄を「霊魂が神の怒りに服する場所」と考える思想と似ているのです。

地獄のレベルを示す八大地獄

仏教では罪の重さや大きさによって、地獄が8つに分かれていることを表す「八大地獄」という用語があります。地獄のレベルが高いほど生前の罪が多くて重い証拠です。現世の悪事によって味わう苦しみが異なりレベルが高いほど地獄にいる期間も長くなるのです。

レベル1|等活地獄(とうかつじごく)

八大地獄の中で最も苦しみの軽い地獄。生前に殺生を犯した人が堕ちるとされています。殺生とは生き物を殺す罪であり仏教では重罪の一つです。人間や動物はもちろんのこと命あるものを殺すのはすべて殺生に該当し、ありや蚊などの小さな虫を殺した場合も殺生罪に問われます。 等活地獄は命を奪った罪の罰を受けるべく、永遠と殺し合いを繰り返す地獄なのです。各々には鉄の爪が生えており、肉を切り裂き合うだけでなく骨まで粉々に砕かれます。粉々になって争いが終わると思いきや、身体が復活して永遠と殺し合いが続くのです。

レベル2|黒縄地獄(こくじょうじごく)

黒縄地獄とは、殺生罪に加えて窃盗を行った人が落ちる地獄です。焼けた地面の上に寝かされたあと熱鉄の黒い縄で縛られて、熱い地面に突き落とされるといわれています。等活地獄と同様に八大地獄では永遠と拷問が繰り返されるのです。高熱で焼けて縄が黒くなっただけではなく、地獄に落ちた人間の肉や血がまとわりついて黒くなったと考えられるでしょう。

レベル3|衆合地獄(しゅうごうじごく)

さらに邪淫罪が加わると、衆合地獄行きを言い渡されます。邪淫とはその名の通り、強姦や痴漢などの性犯罪を指します。それだけでなく、不倫や浮気の淫行や卑猥な煩悩を持つ人も罪の対象です。衆合地獄には美女がおり、地獄の木の上から誘惑をしてきます。美女を追いかけて気に登ると、木の葉が鋭い刃となり体を切り裂くのです。さらに石山に押しつぶされたり鉄臼で叩き潰されたりと、体が傷つけられる激痛の恐怖を受け続けます。なお、未成年にわいせつな行為をした人は、自分の子供が鬼に殺されて苦しむ姿を見せつけられる精神的苦痛を味わうのです。

レベル4|叫喚地獄(きょうかんじごく)

仏教で飲酒は、不飲酒戒と言われ罪になります。飲酒をした人は叫喚地獄へ堕ちて、熱い地面にたたきつけられたり、大鍋で煮詰められたり、極熱の銅を口から流し込まれて五臓六腑を焼かれたりします。飲酒が罪になる由来は諸説ありますが、お釈迦様の愛弟子である莎伽陀(しゃがた)の話が有名です。聡明な莎伽陀があるとき泥酔してしまい、大衆の面前で醜態をさらしてしまいます。どんなに優秀な智者であってもお酒を飲むとたかが外れるという教訓となり、凡人はなおのこと厳しく慎まねばならないと戒められたのです。

レベル5|大叫喚地獄(だいきょうかんじごく)

殺生、窃盗、邪淫、飲酒に加えて、嘘をつくと大叫喚地獄行気を命じられます。大叫喚地獄では熱鉄の鋭い針で舌を抜かれ、目をえぐられます。叫喚地獄よりも鬼たちがさらに狂暴になったり、体を突き刺す針山があったりと、レベル4の叫喚地獄より10倍の苦痛を受けるのです。まさに大いに叫び喚くほど耐え難い苦しみに襲われる地獄と言えるでしょう。

レベル6|熱地獄(しょうねつじごく)

焦熱地獄に堕ちる人間は、大叫喚地獄の罪に加えて、仏教とは異なる教えを布教する教徒が辿り着く場所です。地獄の熱は不動明王が背負っている迦楼羅炎(かるらえん)です。迦楼羅炎は清浄なものをより高いレベルへ上げる一方で、邪悪な物は焼き尽くして消滅します。罪人は当然大火災の中に放り込まれて焼き尽くされます。灼熱の地面で真っ平になるまで叩きつぶされたあと、熱い鉄鍋で火あぶりにされるのです。その業火は他の地獄とは比にならないほど熱く、全身の毛穴から火を噴くほどの威力と言われています。

レベル7|大焦熱地獄(だいしょうねつじごく)

焦熱地獄の罪に加えて尼僧や幼女へ強姦した場合は、苦しみのレベルが極めて高い大焦熱地獄行きです。大焦熱地獄へ堕ちる罪人は、死の3日前からすでに地獄の恐怖を受けると言われています。大焦熱地獄では業火が絶え間なく燃え盛る中、炎の刀で体の皮を削がれて沸騰した熱鉄に頭から放り込まれるのです。上下逆さの状態で、鍋で煮込まれている間も熱鉄の温度はさらに上がり、耐えがたい苦痛が永遠と続きます。最終的には薪や枯れ草と見間違うほど人体のあとかたもなく消え去るのです。

レベル8|阿鼻地獄(あびじごく)

地獄の最下層である阿鼻地獄は、両親や聖者を殺した罪人が堕ちる場所です。苦しみから一秒たりとも逃れられないことから、別名「無間地獄」とも呼ばれます。大焦熱地獄の1,000倍の苦痛を受けるほど刑の重さが桁違いなのです。地獄では体の皮をはぎ取られて、灼熱の炎で身を焼かれる恐怖を幾度となく繰り返します。なお、阿鼻地獄獄に堕ちる罪人には輪廻転生のチャンスすらなく、来世で罪を償うことさえ許されません。宇宙が消滅するほどの長い時間罰続くため、魂自体が消滅するのです。非常な辛苦の中で号泣する無残なさまを「阿鼻叫喚」と表しますが、語源は阿鼻地獄と叫喚地獄からきています。それほど阿鼻地獄の苦しみが壮絶であるとわかるでしょう。

地獄を回避する生き方

地獄を回避したいのなら、現世で徳を積んで清く正しく生きる方法しかありません。しかし、人間は生きていれば誰しも無自覚に人を傷つけているのです。また、生きる上で生物の生命を奪うことは避けられない現象でもあります。そのため仏教の戒律を守り徳を積むことは、ほぼ不可能に等しいのです。地獄に堕ちるのは因果応報なので利己的主義をやめて、無条件で他人の幸福を願える人になれれば地獄に堕ちずに済むかもしれません。罪を犯さないのは当然のこととして、誰かのために行動する心の余裕を持ちましょう。

現世の悪は地獄への入り口

現世で悪事を行うと地獄に堕ちる確率は高まります。犯罪のみならず不倫やいじめなど人を傷つける行為も同罪です。さらに自傷行為やセルフネグレクトといった、自分を大事にできない生き方も罪になるのです。他人も自分も愛しながら前向きに現世をまっとうすれば、死後は地獄ではなく明るい世界へ辿り着けるでしょう。