神道
近年、家を建てるというと、必ずといっていいほど行われる地鎮祭。その土地の神様を祀ることで、建築や工事の無事の進行や完了と、土地と建築物が末永く安全であることを祈願するために行われる祭りです。実はこの祭り、日本人の古い伝統や信仰に基づいたものであることをご存知ですか?この祭儀の流れは、神道の祭儀とほぼ同様のものだといわれています。私たちの生活に色濃く存在する神道の影響。今回は、この神道について迫ってみましょう。
神道の始まり
神道の起源は明確でないといわれています。しかし、神道が日本固有の民族信仰や自然信仰、祖先神の信仰を中心としていることは確かなことです。長い歴史の中で醸成されてきたといわれるこの信仰が、神社神道などで整備されたのは律令期もしくはその直前であるといわれています。
では、神道はどのように発生したのでしょうか。神道そのものは、色々な要件を取り入れて形成されたもので、日本独自の宗教だといわれています。一般的には、青森県三内丸山遺跡の大規模集団生活の跡や祭祀殿を、神社神道の起源とする説があります。そして仏教が538年に公伝されて以来、日本の上流社会に伝わり聖徳太子を中心に受け入れられたといわれています。
神道の神典
宗教には、経典や聖書などの聖典があるのが一般的ですが、神道には明確な聖典はないといわれています。その代わりに、神典といわれる古典である「古事記」「日本書紀」「古語拾遺」「宣命」などが規範とされています。
そもそも、なぜ神道には明確な聖典が存在しないのでしょうか。それは神道が、日本人の生活文化の中から生まれ、さらに生活様式の中で変遷していった信仰であることから、教祖となるような者がつくった統一された教義のようなものがないことが、その理由とされています。
古事記や日本書紀などの古典では、神道の教義とされるものが集約されています。それは、「敬神生活の綱領」と呼ばれるものです。この内容の冒頭には、「神道は天地悠久の大道であって、崇高なる精神を培ひ、太平を開くの基である」とあります。そして、綱領として「神の恵みと祖先の恩とに感謝し、明き清きまことを以て祭祀にいそしむこと」「世のため人のために奉仕し、神のみこともちとして世をつくり固め成すこと」「大御心をいただきてむつび和らぎ、国の隆昌と世界の共存共栄とを祈ること」の3つ示されています。
神道で信仰されたもの
稲作などの農耕や漁業などを通して、自然と深いかかわりの中で生活してきた祖先たちは、自然の恵みと共に、その猛威も知っていました。人々はそんな自然現象に神々の働きを感じ取っていたのです。生命の尊さを実感し、その全生物の生命力を神々の力だと捉えたのでした。そして、祖先たちは、山や岩、木、滝などあらゆる自然物を祀ったのです。
それゆえ、神道で信仰された神々は、海の神、山の神、そして風の神などの自然物や自然現象を司る神々でした。他にも衣食住を司る神、生業を司る神、国土開拓の神などその数は多数。その数の多さが、ご存知「八百万(やおよろず)の神」と呼ばれた由縁です。この八百万の神の系譜は、古事記や日本書紀に多くの物語として記されています。
禊と祓
神道にとっての「禊(みそぎ)」にはどのような意味があるのでしょうか。そもそも禊の意味とは、神聖な水に浸かることによって心身の穢れを洗い清めることを指します。また、これに関連して「祓(はらえ)」というものもあります。これは、罪人に対して、自分の犯した罪に相応する贖い物を出させることで、その罪を解除することを指します。神道は正直や清浄をもっとも重視することであることから、この禊や祓は極めて大切な行いです。
平安時代には、毎年6月と12月の晦日になると、犯した罪や穢れを祓うために、祭祀官や中臣氏が朱雀門で奏上されていたものがありました。それが「大祓詞」、最古の祝詞といわれているものです。大祓式では、人々が過ち犯した様々な罪穢れが祓い清められたのです。中世以後、この「大祓詞」は、神道の経典として尊ばれています。
神道における三種の神器
歴代天皇の皇位継承の際に、しるしとして受け継いだという「三種の神器」をご存知の方は多いことでしょう。三種の神器とは、「やたのかがみ」「あまのむらくものつるぎ」「やさかにのまがたま」のことです。神鏡は皇大神宮の御正体として、御剣は熱田神宮の御正体として、神璽は宮中に祀られています。
神皇正統記には、三種の神器それぞれの意が記されています。鏡は心の万象を照らすという意味で、正直を表します。また、剣は剛利決断の徳があることを意味し、知恵を表します。そして玉は柔和善順の徳のある、慈悲の意味があるといわれています。
日本民族特有の信仰である神道。日本の生活文化に色濃く残り、神社も、「神の聖地である森を守る」という意味があるといわれています。この神の聖地である森を守る思想が、自然環境保護の考え方につながっているのです。私たちの生活には、神道が今でも根強く息づいています。
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