ホムンクルス
ホムンクルスの由来
ホムンクルスとは、ラテン語で「小人」という意味になります。一般的には、錬金術師が作りだした人造人間のことを指しています。またこれを作りだす技術のことも、ホムンクルスと呼ばれることがあります。
ホムンクルスの誕生は、にさかのぼります。パラケルススという名のスイス人医師が、医者としての本業よりも錬金術や魔術に傾倒し、挙句には勤めていた大学の仕事を失うほど研究にのめりこみました。そしてついに、人造人間を作りだすことに成功したと言われているのです。パラケルススはホムンクルスを作りだしたことで、錬金術師として名前を今日まで残していますが、実際には新しい医薬品を生成するなど医学の世界でも後世に名を残している偉人とも言えます。その優秀さもあってか、ホムンクルスを作りだすことができたのは、パラケルススだけという説があります。
ホムンクルスの作り方
ホムンクルスの作り方には、2つの説があります。ひとつは、まず蒸留器に精液を入れ、40日間密閉して腐敗させると透明な物質が現れます。それに人間の血液を与えて、馬の胎内と同じ温度で40日保存すると、小さな人造人間ができる、というもの。しかしその人造人間は、あらゆる知識を持っているものの、外気に触れるとすぐに死んでしまうとされています。
もうひとつの作り方は、クリスタルガラスの中に三日月の夜の夜露と男性の血液を入れて密閉し、1ヶ月保存します。その後、上澄みを取り、動物の抽出液を加えることで容器の中には赤い沈殿物ができ、さらにゆっくりと加熱して1ヶ月保存します。すると赤い沈殿物が内臓になり、血液と神経が生成されます。そこへ先に取った上澄みを加えると、男女の幼いホムンクルスが誕生するというものです。
母胎が「精子を育成する環境を整えた場所」、と考えられていたパラケルススの時代。その母胎と同じ環境に精子を置けば、人間を造りだすことができると考えられていたことが、この方法を生みだしたとも言えます。ただ、このホムンクルス生成についてはあまりにも奇想天外な内容ですから、ホムンクルスはクローンの前身であるという説も唱えられています。
ホムンクルスに関する見解や実情
スイスの生物学者のシャルル・ボネは、卵子の中にホムンクルスは存在し、それは成長するものだと発言しています。また別説では、精子の中にホムンクルスが存在するという者も現れましたが、20世紀以降、これからの説は間違いであると否定されています。
魔術界や文学界で、ホムンクルスに関して記されている著作は実は意外に多く存在します。儀式魔術師として有名なアレイスター・クロウリーは、ホムンクルスに関する人工生命体の解釈は間違っていると著作「ムーン・チャイルド」に記しています。また文豪ゲーテは、著作「ファウスト」の中でホムンクルスを取り上げています。また現代の日本では、数々の漫画、アニメの世界でホムンクルスが登場する作品があるなど、人の心を魅了して止まない不思議さと深さがそこにはあります。