サバト
サバトとは
悪魔や魔女たち、さらにその崇拝者たちは、特定の日の夜に集会を開いているといいます。神を畏れ敬う人々は、その集会を表すサバトという名とサバトの参加者を忌み怖れてきました。基本的にサバトは、神を崇拝する儀式とは正反対のことを行うとされます。サバトは、子どもや女性の生き血を捧げたり、飲酒や淫行が行われたりといったキリスト教的視点からすると、まさに異端的な饗宴です。ただし、実際にそのようなサバトが歴史的に行われていたのかというと、それは非常に疑わしく、古い俗信が魔女狩りや魔女裁判において都合の良い異端者の理由付けとして次第に肉付けが行われていった結果、「サバト」という集会とそれを示す言葉とが定着したとも考えられています。
サバトのはじまり
サバトの原型は、原始的なシャーマニズムの儀式や神話的民間信仰の習慣などの中に見られるとする説があります。異なる文化や宗教、民族などへの無理解や否定的な感情が、それらを基礎とする集会や儀式などを「異物」として捉えることにつながり、さらには、それが中世ヨーロッパで徹底して迫害された魔女狩りの理由付けとして利用されていき、現在にいたる悪魔や魔女とその崇拝者たちによる集会という定義が作られていったと考えられているのです。
サバトはいつどこで
サバトは夜中、人の目に触れることのない森深い場所や地下などで行われます。夜が選ばれるのには、人目を忍ぶ悪魔や魔女という存在が主人公であるがゆえという理由もあれば、禁忌のイメージを強く表すことのできる時間帯であることも関係しています。森や地下が選ばれるのも、光のもとにあるキリスト教に対して、その暗さが悪魔や魔女の闇の世界に通じているからだとされます。
サバトとユダヤ教
サバトが開かれる日については、確かな説はないものの、ユダヤ教のシャバットという安息日である土曜日の夜がその由来ではないかという説が多くあげられています。これは、中世ヨーロッパにおける一部の宗派への迫害行為を魔女裁判上で証明するために、シャバットの曜日と時間を悪魔と魔女の集会と位置付けたことの延長上にあるともいわれています。シャバットの由来には酒神を讃える祭りが含まれているとされ、酔って無礼講的な行動をする集まりというイメージを悪魔たちの集会「サバト」へと結びつけていったようです。
サバトの今
歴史的に多くのサバトの存在が報告されてはいますが、特に古い時代の多くの報告例は魔女認定のためのこじつけであることが多かったと考えられています。ただし、中世の魔女裁判の時代に「サバト」という言葉と定義はすっかり定着してしまったため、反キリスト教的な団体が、夜に秘密めいた饗宴を開くことを「サバト」と称するようになり、現代にいたっても異教徒による「サバト」は脈々と受けつがれ、今も世界各地で開催されているといいます。
歴史的には、神話や民間信仰的な森の饗宴にすぎなかったものが、魔女を裁くための手段として利用されるうち、「魔」「闇」「異」といったイメージの集会として「サバト」は定義されるようになったのです。現代では、カルト的な団体による人目を忍んだサバトもあれば、より娯楽的な感覚のパーティーとして開催されるサバトまで、多くのさまざまなサバトが存在しています。