降神術

降神術とは

降神術のイメージ

神からのお告げを直接言葉として聞く方法があります。その一つが、祈祷や呪術によって、神を一時的に地に招き降ろして霊媒などに宿らせる神降ろしの術であり、「降神術」と呼ばれます。その形式やアプローチは、祈り・ハーブやドラッグ・踊り・歌など、さまざまですが、どの場合もトランス状態またはそれに近い状態になることで、自分自身または霊媒として適した人や物に神を招いて移り宿らせます。こうして降ろされた神は、人の言動や物の姿、それらの語り、壊れ方、揺れ方などの状態によって、お告げを伝えます。

降神術と降霊術

どちらも人ではない存在を人の世界へと招いて降ろす術のことをいいますが、降神術が神または神霊に限定した術であるのに対し、降霊術はその両者を含めた上で、より広くあらゆる霊的存在を降ろす術をさします。たとえば、先祖の霊、守護霊などを呼び出すのもまた降霊術です。

降神術で降りた神や神霊が教えてくれること

降神術は、人には知りえない情報を得るために行われます。人知を超えた英知や力を持つ存在は、人や社会の失われた過去やまだ見ぬ未来を知っている、またはコントロールできると考えられています。その力の一部を尋ねて参考にし、加護を得るために行うのが降神術なのです。

降神術の担い手とは

降神術は誰にでもできる術ではありません。神や神霊という強大な力を降ろすには、それなりの能力が必要です。その能力は、生まれつき備わっていることもありますが、生来の能力をさらに磨くための修行を経た結果得られるとされます。日本では琉球地方に伝わるユタ、海外ではアメリカンネイティブのシャーマンなどが知られています。彼らは神を降ろす呪術師や祈祷師であると同時に、神の宿る霊媒になることもあります。

降神術で神が宿る場所とは

神が宿る状態は、その宿主にも大きな影響を与えます。木や鏡といった物に宿らせる場合には、その宿主が降りる神にふさわしいかどうかが重要な選択基準となります。神域で大切に育てられた木、神官などによって十分に清められた神具などがあてがわれますが、十分な素質を持たない物を宿主とすると、神が降りない、降りた神が怒ってしまい、お告げを伝えてくれない、誤ったお告げを残すといったことも起こりえます。また、宿主が人の場合には、宿主としての適性はその人の命にも関わります。ハーブやドラッグを用いてトリップ状態に入ることもあり、それに耐えうる強靭な体、トランス状態にも耐えうる精神力などが必要とされます。

降神術はどんな時に使われるか

健康を祈る、金運や縁結びを願うといった、非常に現世的かつ利己的な願望に対して降神術を使うことはあまりありません。これは、神という存在が一個人の幸福のために積極的に行動することがないという性質を持っていることから理解できるでしょう。ただし、グループや社会、国家などの集合体の幸不幸につながる啓示を受けるためには適しています。

神を人や物に降ろして託宣を得るという行動は、歴史上古くから世界中で行われてきました。そこに現れる神の種類も、降神のために執り行われる儀式も術も、それを司る降神術師の地位や呼び名も異なりますが、降神術が社会の中で担ってきた役割には変わりがありません。降神術は、神の助けを求める人々が、その属する社会の運勢を知り、それをより良い方向へと導くための重要な指針として、受け継がれてきたのです。