閻魔大王

閻魔大王のイメージ

閻魔大王と言えば、地獄や冥界の主として死者の生前の罪を裁き、天国へと送るか、あるいはどの地獄へ送るかを決める神様(仏様)として知られています。仏教(宗教)のジャンルを越えて、美術作品や漫画、小説など、エンターテイメントの分野においてもなにかとキャラクターとして登場することから、その存在自体は広く知られていることでしょう。ではその閻魔大王、具体的にどのような存在なのかを見ていきましょう。

閻魔大王とは

閻魔大王の閻魔は、サンスクリット語のヤマの発音を音訳した言葉になります。そこに大王、あるいは王を意味するラージャが付いてヤマラージャとなり、音訳が閻魔羅闍、意訳が閻魔大王となりました。閻魔の元であるヤマには、縛る、雙世、平等などの意味を持ち、つまりは罪人を捕縛すること、苦しみと楽しみの選択を行うこと、平等なる裁きを行うことの意味を持ち、そこから来ているとされています。

「嘘をつくと、閻魔様に舌を抜かれて地獄へ落とされる」、子供の頃、親からそのようなことを聞かされた人も多いことでしょう。これは民間伝承のひとつで、子供に限らず嘘をつくことに対する戒めを表しています。それくらいに閻魔大王は、まず「怖い」存在というイメージが持たれているのではないでしょうか。ですが閻魔大王が地上に現われるときは、地蔵菩薩の姿を取るともされており、同一の存在(本地)であるとされています。お寺の御本尊として、あるいは道端の石仏として親しまれているお地蔵様という存在は、実は閻魔大王が現世で救うべき人を見定めている姿だとも言われているのです。

閻魔大王の法廷とは

人は死後に閻魔大王の前で裁きを受けるわけですが、それはいったいどのような法廷なのでしょうか。鬼に引かれて閻魔大王の前に至った魂は、そこで閻魔大王と共に人生をフラッシュバックします。閻魔大王が死者を裁く際、テレビのモニターのような鏡を用います。これは浄玻璃鏡と呼ばれる鏡で、死者が生前の人生で行ってきた善悪が映し出されて、裁定の判断要素とされるものです。生前の行為すべてが余すところ無く映し出される鏡なので、死者は天国へ行きたいがために閻魔大王に対して嘘をついたところで、すべてバレてしまうとされます。

閻魔大王の両脇には、司録、司命という書記官が控えてサポートを行っています。さらには、小野篁なる人間が、閻魔大王の裁判の補佐をしていたという伝説もあります。この小野篁は地獄の鬼でもなく、ましてや死者でもなく生きた人間であり、京都の六道珍皇寺にある井戸から冥府へと生きたまま下り、その日の業務(裁判補佐)が終わればまた井戸からこの世に戻って来るという、生きたままあの世とこの世を行き来出来る人物として伝説となっています。

生きているうちにお参り。閻魔大王を祀るお寺

上述のように、閻魔大王は地蔵菩薩として出現するとされていますが、そのままの姿で祀られていることも多くあります。生きているうちにお参りしておくのも、減罪や今後の人生の戒めとしても良いかもしれません。

◆六道珍皇寺

京都市東山区にあるお寺で、小野篁が冥界に通ったと伝わる井戸で知られています。付近は六道の辻と呼ばれており、毎年8月の六道詣ででは多くの人がお参りをして、井戸の見学もしていきます。

◆西明寺

栃木県益子町のお寺で、坂東三十三ヶ所観音霊場の札所としても知られています。こちらの木造閻魔大王像は、笑い閻魔として知られています。その表情がまさに笑っているように見えることから、こう呼ばれています。

◆太宗寺

新宿の繁華街外れにあるお寺です。こちらの閻魔様は都内最大の閻魔大王像であり、奪衣婆像も一緒に閻魔堂で祀られています。七福神巡りにも指定されているので、年始は特に多くの人がお参りに訪れます。