虚舟
虚舟とは
虚舟とは、ミステリー好きなら誰もが知っている、江戸時代の未確認物体目撃談です。「虚舟伝説」と呼ばれ、当時の人々が描いたイラスト入りの史料も多数現存しています。史料によって詳細は異なるものの類似点は非常に多く、世界中で目撃されている円盤型のUFOに近い形をしています。
虚舟伝説
享和3年(1803年)の春、常陸国(茨城県)の「はらやどり」という浜で、事件は起きました。海に異様な形をした舟のようなものが出現し、人々が浜辺へ引き上げたのです。まるで蓋をしたどんぶりのように丸みを帯びたそれは、5m程の大きさでした。上部はガラス障子になっており、継ぎ目は防水のためなのか、松脂が塗られていました。下部は鉄製で、筋金が張られた頑丈なつくりだったといいます。
さらに、ガラス障子から中を確認したところ、女性が1人乗っていました。眉と髪は赤く、顔は桃色。白くて長いつけ毛を背中まで垂らしていたそうです。60㎝程の箱を大事に抱えており、言葉は全く通じなかったといいます。舟の中には、水と布、肉のような食料がありました。人々は見たこともない風貌の女性を異国の罪人なのではないかと推測し、大事になることを恐れて舟に戻し、そのまま沖へ返してしまったといいます。
虚舟伝説の場所
多くの史料によって、虚舟伝説は現在の茨城県で起きた事件であることは判明していました。しかし、「はらやどり」と呼ばれる浜は存在しないため、創作を疑う声も上がっていたのです。そんな中、2014年、甲賀流忍術に関する古文書の中から、新たな虚舟伝説の文書が発見されました。そこに、虚舟事件は「常陸原舎り濱(ひたちはらしゃりはま)」で発生したと記録されていたのです。これにより、現在でいう茨城県神栖市の「舎利浜」が発生場所であると明らかになり、伝説の信憑性も高まりました。
虚舟の宇宙文字
虚舟には沢山の文字らしきものが描かれていたことが、史料によってわかっています。○と△を組み合わせたような文字で、解読は不可能。「宇宙文字」とも呼ばれ、曳舟伝説の謎を深めています。
UFO以外の可能性
虚舟は、一般的な船とは程遠い形状の円盤型です。このことから、UFOであるという説が有力視されています。外国船であるという説もありますが、当時の外国船は現代とほとんど変わらない形状です。当時、アメリカでは既に潜水艦が発明されていたため、可能性があるとすればそちらの方でしょう。しかし、江戸時代に外国からわざわざ潜水艦で日本に訪れるようなことがあったのか。疑問が残ります。
世界からも注目される虚舟
日本で初めてのUFO目撃談だと言われる虚舟伝説は、イギリスやオーストラリアの超常現象研究誌等で紹介されたり、ネットで取り上げられたりと、世界からも注目されています。未確認物体が好きな人達から、国境を越えて愛される伝説となっているのです。
現存する史料があることから、創作と考えるほうが難しい虚舟の伝説。舟らしき何かに乗ってやってきた奇妙な女性は、やはり宇宙人だったのでしょうか。真相を超えて多くの人々を惹きつける、魅力的な伝説です。