聖霊
聖霊とは
カトリック教会、プロテスタント、正教会などをはじめとするキリスト教の教えにおいて、神は3つの位格(ペルソナ)を持つとされています。これが「三位一体の神」の教えであり、3つの人格とは、「父(主権である神)」、「子(キリスト)」、そして「聖霊」を指します。この3つはいずれも異なる存在ですが、本質は同じものです。
では、その中の一つである「聖霊」とはどのような存在なのでしょうか。聖霊とは、神が活動するための力のことです。肉眼で見ることはできないもので、聖書の中で様々な形で登場します。「息」、「風」、「生き物の内にある活力」、「人の気質や態度」…。また、時に聖霊は「神の手」「指」であるともされており、神の意思なしには作用しないものだと言えるでしょう。
聖霊の働き
神を信じることにより、人々の内側には聖霊が与えられます。このことを「聖霊の内住」と呼びます。聖霊には、主に次のような役割があります。
- キリストの教えや御業、死と復活がどのような意味を持つか、信仰者に体験的に知らせる
- キリストが伝えようとする神の恵みを理解させる
- 信仰者に自らの過ちを認めさせる
- 信仰者を神の子として生まれ変わる過程へと導く
- 信仰者を愛・喜び・平和の心などを兼ね備えた徳の高い人格へ導く
聖霊は最終的に、全宇宙の罪が認められ、世界が真の意味で完成することを目指しています。キリスト教においては、この世で起きる多くの出来事は、偶然ではなくすべて聖霊の働きによって起きていることです。世界の完成を目指し、精霊たちは日々神が造ったこの世界で、人々に働きかけているのです。
聖霊降臨「ペンテコステ」とは
聖書には、「ペンテコステ(聖霊降臨)」というエピソードが記されています。十字架での死から復活したキリストは、弟子たちに「近いうちに聖霊が降る」と告げ、天へ昇っていきました。後日、穀物の収穫を祝う「五旬祭」の日に、集まった使徒やキリストの家族が祈りを捧げると、激しい風が吹いてくるような音が天から聞こえ、炎のような舌が一人ひとりの上に降り注ぎ、使徒たちは聖霊に満たされました。「舌」は神の言葉を語る力を指し、舌を受けた使徒たちは、聖霊が語らせるままに母国語以外の言葉を話し始めたと言います。「風」は神の息を、「火」は人の固くなった心を溶かしてくれる聖霊のシンボルだと言えるでしょう。
この出来事は、現代においては「聖霊降臨祭」「五旬節」「五旬祭」などの名で、キリスト教の祝祭日に各地で祝われます。日付は毎年異なり、復活祭を1日目として数えた50日後に行われます。祝い方も教派や国によって様々。例えばイタリアでは、式中に炎の舌をイメージしたバラの花が撒かれたり、フランスでは風の音を表すトランペットが吹かれるなどします。キリスト教を信仰する国では毎年お祝いするほど、聖霊は身近な存在だと言えるでしょう。