猫又

猫又とは

猫又のイメージ

日本各地の民間伝承や怪談に登場する妖怪猫又(猫股)」。猫又には大きく分けて2種類存在します。人家で暮らしていた猫が化けたものと、山に暮らす猫が化けたものです。その特徴として、「長生きした(一説では20年以上)猫が化けたものであること」「猫又になると尻尾が2つに分かれること」「猫又は人の言葉を理解し、話せること」などが挙げられます。

猫又の起源は、中国に伝わる「仙狸(せんり)」という猫の妖怪だと考えられています。「狸」という漢字は、中国語でヤマネコという意味。仙狸は、年老いた猫が神通力を得たもので、美男美女に化けては人の精気を吸うのです。

猫又の性格も極めて凶暴で、人間をたぶらかしたり、山中で人を襲うといいます。しかし、人家で飼われていた猫又の中には、元の飼い主に恩返しをするという温厚な性格のものもいるようです。こうした猫又をはじめとする化け猫の伝承は、平安時代末期に編纂された歴史書『本朝世紀』にすでに登場しており、江戸時代に制作された『百怪図巻』や『画図百鬼夜行』などの妖怪絵巻にも多く描かれています。

猫又の伝説

日本の猫又伝説が、そのまま土地の名前として残っているケースも存在します。

富山県魚津市と黒部市の間に位置する毛利三山の一つに、「猫又山(ねこまたやま)」という山があります。その昔、猫又が人から追われ、この土地に流れ着いてそのまま住み着きました。それ以降、この山ではたくさんの猫の鳴き声が聞こえるという怪異が起こったと言います。一説によれば、本当に大きな身体をした猫が棲んでいて、人を襲うことがあったと伝えられています。

また福島県の磐梯町には、猫魔ヶ岳(ねこまがたけ)という山があります。この山にも、昔化け猫が棲みついていて人を食べていたという伝説が残っています。あるいは、ネズミに食料を食い荒らされて困っていたところ、お寺のお坊さんがネズミ退治をするために猫王を祀ったことに由来するという説もあります。いずれにせよ、土地に猫の伝説を由来とする名前を付けてしまうほど、昔の人々にとって猫は畏れるべき存在だったのでしょう。

猫には不思議な力がある

世界的に見ても、古くから猫には不思議な力があると考えられてきました。西洋の魔女の使い魔に猫が多かったり、「猫が顔を洗うと雨が降る」「黒猫に横切られると不吉なことが起こる」「猫を殺すと7代先まで祟られる」など、猫にまつわるジンクスも多く存在します。そのため、長年生きた猫が人の言葉を話したり、神的な力が宿ると人が考えるのも、自然の摂理だと言えるでしょう。