人狼

人狼とは

人狼のイメージ

人狼は、吸血鬼やフランケンシュタインと並ぶ西洋に伝わる伝説上の怪物です。英語では「ウェアウルフ(werewolf)」、人狼の中でも雄のものを「狼男」と呼びます。彼らは、狼の尻尾を皮膚と筋肉の間に隠し、日中は私たちと同じ人間の姿をしています。そして、夜になると四足歩行の狼に化け、鋭い牙と大きな口で人や家畜を襲うのです。一説では、昼夜問わず自由自在に狼に変身できるもの、頭部は狼で身体は人間という姿のものもいると言います。人狼の力は、生まれながらにして人狼の力を持つ者以外は、悪魔や魔女と契約するか、狼に噛まれ「狼憑き」になることによって手に入れられると伝えられています。

人狼の起源

人狼の伝説がいつ頃発祥したものなのか、その起源は明らかになっていません。ギリシャ神話において、ゼウスがリュカオン王を狼に変身させる話が出てきますが、本人の意思による変身とは異なるため、人狼とは別物であると言えるでしょう。

一説によると、人狼の起源は中世ヨーロッパだとされています。中世初期のゲルマン人たちは、民衆の中から犯罪者が出ると、その者の人権をはく奪し、狼として森へ追放する風習がありました。狼として追放された罪人は、民衆たちに見つかれば即座に殺されてしまいますが、反対に民衆を襲うこともあったと言います。こうした背景や、「いつどこから何者かが襲ってくるかわからない」という深い森林への恐怖心が重なり、人狼伝説が誕生したのではと考えられているのです。

人狼の変身条件や弱点

人狼が変身するための条件としてよく知られているのは、「満月や丸いものを見ると変身する」というものではないでしょうか。しかし、これらは映画や小説などの創作から生まれたもので、変身するための必須条件かどうかは定かではありません。他にも、「狼の毛皮を身にまとう」「家畜の肉を食べる」などの条件で変身できるとも言われています。

また、人狼の弱点として「銀製の武器(弾丸)」が挙げられることもありますが、こちらも創作が元となっており、どうすれば人狼を討伐することができるかは一切記録に残っていないのが実態です。

人狼の貴族?

人狼はただ人が生んだ妄想上の化け物なのでしょうか。最後に、「人狼」さながらの風貌をしていたという歴史上の人物を紹介します。彼の名前はペトルス・ゴンザレス(1537~1618年)。カナリア諸島に生まれ、スペインによる侵略をきっかけにフランスの宮廷で爵位を授かった、正真正銘の貴族です。ペトルスの顔や身体は、異常なまでに毛におおわれていました。彼は「多毛症(別名:アムブラス症候群)」という、本来であれば生えるべきではない場所にまで多量の発毛が見られる、非常に稀な病気の最初の患者です。彼はやがて、フランス宮廷一の美女と結婚し、6人の子供を設けましたが、そのうちの4人の子もまた、全身が毛におおわれていたと言います。

明らかにされていない謎が多く残る人狼。現代において、人狼は映画やアニメなどの創作に登場するだけではなく、「人狼ゲーム」(複数で行うテーブルトークRPG)で取り上げられるなど、人気のモチーフとなっています。