結界

聖域と俗世を分ける境界線

結界のイメージ

結界とは、聖なる場所と俗なる場所を隔てる境目のことです。浄・不浄を線引きするもので、結界の中には不浄や災いが入り込むことはできません。大和言葉では「端境」「境」とも言います。

そのルーツは仏教用語にあり、仏教の伝来とともに中国から日本へ概念が伝わりました。もともとは、僧尼たちの修行の妨げにならないよう、寺院の外と内で一定の区域を設けて、戒律を守らせていたことが始まりだとされています。

神道における結界

こうした結界の概念には神道や密教にも存在します。神道においての結界も、悪霊や穢れたものの侵入を防ぐためのものです。例えば、神社のしめ縄は神様が祀られているという証ですが、これも邪霊を退けるための結界の一つです。

密教の一部では、印を結んで真言を唱えることで聖域をつくる、一種の呪法を指すこともあります。呪法でつくる結界としては、陰陽師が最もイメージしやすいのではないでしょうか。陰陽師は平安時代の官職の一つで、特異な能力を使い祈祷や占術を用いる神職の役割も担いました。陰陽師として有名な安倍晴明は、五芒星が描かれた呪具を用いて悪霊や災いを防いだと言われています。

結界の都市伝説

日本には、結界に関する次のような都市伝説が存在します。江戸幕府を開いた徳川家康は、江戸を災いから守護するため、ある計画を企てました。江戸城を中心に、「鬼門」「裏鬼門」に当たる場所にお寺や神社を配置する「鬼門封じ」を行うことで、魔の侵入を防ごうとしたのです。まず鬼門の方角に寛永寺、その反対側には増上寺を据え、さらに加護を厚くするために神田明神と日枝神社の場所を移転させました。この徹底した計画を主導したのは天台宗の僧侶・南光坊天海で、彼は風水にも精通していたと言います。

結界は宗教的な話だけではなく、意外にも私たちの生活に身近な存在でもあります。例えば、家の台所の入り口に暖簾(のれん)を下げているという方もいるのではないでしょうか。この暖簾は、火を扱う場所である台所に結界を張ることで災いを退ける意味があったと言います。「災いを避ける」ための結界の概念は、私たちの生活に根強く残っているのです。