四元素

万物は火・風・土・水から構成される

四元素のイメージ

四元素とは、この世界のすべての物質は、火・風(あるいは空気)・土・水という4つの元素から構成されているという概念のことです。古代ギリシャで生まれ、ヨーロッパを中心に18~19世紀頃まで支持された物質観で、「四大元素」「四原質」と言うこともあります。

古代ギリシャにおいては、哲学者によって重きを置く元素が異なりました。例えば、哲学者の一人であるタレスは、4つの中で最も重要なのは水だと考えました。また、アナクシメネスは風、ヘラクレイトスは火が万物の根源であると考えたと言います。こうした議論を踏まえて、「物質は4つの元素が様々な割合で混合されて構成される」と論じたのがエンペドクレスです。一方で、彼らの共通の認識として、「四元素は第五の元素である『エーテル』という気体から生じたものだ」と考えていました。エーテルとは神の元素で、この世の物質すべてを出現させた“始まりの大気”のことを指します。

アリストテレスと四元素

こうした四元素の考え方をさらに発展させたのがアリストテレスです。アリストテレスは、すべての元素の基礎となるのは第一質料(マテリア)であり、それに「熱・冷」「湿・乾」という相反する二対の性質が加わることで、四元素が出現すると論じました。つまり、以下のような考え方です。

  • …第一質料+熱+乾
  • …第一質料+熱+湿
  • …第一質料+冷+乾
  • …第一質料+冷+湿

すべての基本が第一質料ということは、その性質を変えることで4元素そのものを変成させることも可能ということです。こうしたアリストテレスの物質観は、日常生活を取り巻く物質の変化や運動を見事に説明するものだとして、多くの人から支持されました。

錬金術と四元素

このアリストテレスの理論に着目したのが、中世ヨーロッパの錬金術師たちでした。物質が相互転換できるということは、人間にとって有益な金や不老不死の薬を生み出すことも可能です。錬金術師たちは、第五元素を物質の「精気」とみなし、「プネウマ」と呼びました。そして、プネウマは四元素の基礎となる第一質料と「熱・冷」「湿・乾」の性質を結びつけるものと結論付けました。つまり、すべての物質の中にプネウマは存在しているわけだから、このプネウマを抽出することができれば、物質の結びつきを自在に操れるようになり、金を生み出すことも夢ではないと考えたのです。プネウマを抽出するためには蒸留装置が用いられました。第五元素は気体ですから、物質を熱することで蒸気を発生させ、プネウマを取り出そうとしたのです。

その後も物質観をめぐっては様々な議論が繰り広げられましたが、1905年、理論物理学者であるアインシュタインにより相対性理論が発表されると、人々の考えも第五元素の存在を否定する流れへと変わっていきました。