テトラクテュス

宇宙は数からできている

テトラクテュスのイメージ

テトラクテュスとは、古代ギリシャの数学者・ピタゴラス(紀元前582年~紀元前496年)が提唱した1、2、3、4の4つの数字のことです。ピタゴラスは数学者でもあり、宇宙の真理や人間に内在する謎を解き明かそうとした神秘家でもありました。彼は長年の研究の末、宇宙を始めこの世のすべてのものは数からできていると導き出します。その中でも、1~4の数字を特に重要とし、ギリシャ語で「4つであること」という意味を持つ「テトラクテュス(tetraktys)」と名付けたのです。

また、彼は1~4すべての数字を足すと出来上がる「10」の数字を完全な数であると考え、10個の点を正三角形の形に配置した図を、自らの教派のシンボルとして定めました。彼や教派の研究者たちは、この図を自然界の源であり神聖なものとし、何か誓いを立てる際はこのシンボルに向かって意思を示したと言います。

さらにピタゴラスは、音楽の分野にも数の法則を発見しました。彼によれば、音楽のハーモニーは振動数が1:2、2:3、3:4の時に最も調和すると言います。ラファエロによる有名な絵画『アテネの学堂』に描かれたピタゴラスの足元には、テトラクテュスをもとに全音階の原理を示した書字板が置かれています。

ピタゴラスの生い立ち

ピタゴラスは、紀元前580年頃、エーゲ海のサモス島に生まれました。若くして宇宙の存在や人間に内在するものに興味を持った彼は、知識を求め、エジプトなどの各地へ旅に出ました。そして、およそ20年にも及ぶ放浪の末、当時あった数学知識のすべてを身につけて帰郷。現在のイタリアにあるクロトンという町で「ピタゴラス学派」を開校します。「この世のあらゆるものには数が内在し、宇宙のすべては数字と計算によって導くことができる」という彼の思想には多くの人が魅了され、研究所には数千人もの人が集まりました。しかし、入門するにはハイレベルな数学の試験をクリアしなければならず、門前払いになった人々もいたと言います。