阿鼻地獄

阿鼻地獄とは

阿鼻地獄のイメージ

阿鼻地獄とは八大地獄のひとつで、五逆罪を犯した者が落ちるといわれています。五逆罪の内容には「母を殺すこと」「父を殺すこと」「僧を殺すこと」「教団の和合一致を破壊すること」「仏の身体を傷つけること」があげられます。阿鼻地獄は無間(むかん)地獄ともいわれており、間が無く絶え間なく痛みを受け続けるという意味なのです。

また、阿鼻地獄だけではなく、地獄に落ちる基準として「生き物を殺さない」「嘘をつかない」「盗みを働かない」「亭楽に溺れない」「お酒を飲まない」とありますが、これは動物を殺生している人間だとほとんどの人が地獄に落ちることになります。そして阿鼻地獄へ落ちるのには2000年かかり、八大地獄の中でも深いエリアまで落ちるのです。

八大地獄とは

他の地獄は阿鼻地獄と比べると刑も軽くなりますが、それでも地獄にはかわりはありません。どのような地獄があるのか簡単に説明していきます。

等割地獄

地上から1000由旬(ゆじゅん)のところにあり、一番近い地獄です。地上にいる小さな生き物を殺生すると、この地獄に落ちます。多くの者がいて、与えられた剣や鉄の爪でお互い殺し合うのですが、ここで死んでも鬼が「活活」といえば生き返り、また同じことを繰り返すのです。その他にも皮を剥ぎ取られ、熱して溶けた鉄の釜に入れられる「おう熟処」があります。無刑期ではなく、9125万年経てば刑を終え、また輪廻する機会が与えられます。

黒縄地獄

殺生と盗みを働いた者が落ちる地獄です。この地獄は地面が焼けた鉄でできています。ここでは焼けた黒縄で身体を何重にも縛られ、それに沿ってノコギリで切られる刑が待ち受けているのです。さらに、周りには鉄の山が聳え立ち、罪人に縄を伝って渡らせますが多くのものは落ちて煮えたぎった釜に入れられます。

衆合地獄

殺生と盗み、そして淫らな行為をした者が落ちる地獄です。牛や馬の顔を持つ鬼に鉄の山へと追い込まれ、その山々の両側から押しつぶされる刑があります。そして鉄の臼に入れられて、大きなハンマーで身体を砕かれる苦痛を味わうのです。剣でできた林の上には美女が手招きしており、罪人が登ると今度は美女が下に現れるため、罪人の身体が剣によって引き裂かれます。

叫喚地獄

殺生と盗み、淫らな行為に続き、お酒を飲んで悪事を働いた者が落ちる地獄です。ただ飲酒するだけでは落ちず、お酒に毒を入れて人を殺すなどした場合に落ちます。ここではお湯が煮えたぎる大釜に入れられ、口に溶けた銅を流し込まれます。罪人は叫喚しますが、鬼たちはそれを無視してそのまま苦しみを与えるという刑を続けるのです。

大叫喚地獄

殺生と盗み、淫行と飲酒の他に嘘をつくことで落ちる地獄です。叫喚地獄よりも10倍ほどの大きな釜に入れられ、苦痛を与え続けられます。刑期もさらに長くなり、苦しみが続くのです。

焦熱地獄・炎熱地獄

これまでの悪事に加え、仏教の教えに反し実行した者に対して科せられる地獄です。幾度も地獄の鬼たちから熱く熱した鉄板の上、鉄串で刺されます。これまでの地獄の炎に比べると、この地獄は地上の全てが一瞬で焼き尽くされるほどの威力があります。

大焦熱地獄・大炎熱地獄

これまでの悪事に加えて、尼僧や幼女に対して強姦を行った者が落ちる地獄です。炎は最大高さ500由旬、横が200由旬あるといわれています。罪人はこの炎で焼かれ続けるのです。ここに落ちた者は転生待ちの間でもずっと刑を受けなくてはなりません。

阿鼻地獄の背景

五逆罪を犯した者は阿鼻地獄に行くのですが、そこには高さ8万由旬(約209万kmといわれている)・8億kmの七重の鉄の城(無間の火城)が立ちはだかります。城の周りには七重の鉄条網で囲まれており、刀の林がそびえ立っている状況です。さらに40由旬・400kmの銅でできた番犬が四隅に待機しています。番犬の牙は剣で全ての毛根から猛火と悪臭を放っているのです。阿鼻地獄から逃げようとしても、この番犬がいる限り逃れられません。

さらに64の目がついており、曲がった剥き出しの牙が上に向かっている18人の鬼たちが待機しています。その鬼の近くには角から火を吹き、頭が8つある牛もいるのです。城内に入ると80もの釜があり沸騰して1083度以上する銅が流れ出し、至る所に炎が燃え盛っています。そして室内に入ると、8万4千もの毒蛇と鉄でできた蜂が襲いかかってくるでしょう。さらに飢餓により、自分自身の身体を焼いて食べたり、犬に噛み殺されたりという刑が絶え間なく続きます。まさに休むことができないくらい苦痛を味わうのが阿鼻地獄なのです。

地獄に落ちた者の寿命

阿鼻地獄に落ちた者に寿命が与えられますが、人間界の時間で計算すると349京2413兆4400億年といわれています。この期間は宇宙が誕生して消滅するまでの時間だといわれているため、終わりのない時間だということがわかるでしょう。阿鼻地獄に落ちたら寿命がくるまで休みなく苦しみを味わう必要があります。そのため、ここに落ちた者はほとんど永遠に刑を受け続けることになるのです。