HSP(ハイリー・センシティブ・パーソン)

HSPとは

HSP(ハイリー・センシティブ・パーソン)のイメージ

身の回りに些細なことに傷つきやすい人はいないでしょうか。もしくは自分自身がそういうケースもあるでしょう。常に生きづらさや疲労感を抱えている場合、繊細気質のHSPかもしれません。こちらの記事ではHSP診断ができるほか、HSPの知識や向き合う工夫を併せて紹介します。心当たりのある人はチェックしてみてください。

HSP=「繊細な人」を表す

HSPとは「Highly Sensitive Person(ハイリー・センシティブ・パーソン)」の略称。子どもの場合は HSC「Highly Sensitive Child」とも表記します。非常に感受性豊かで、繊細な人を表した名称です。90年代初めに、心理学者であるエレイン・N・アーロン博士によって名づけられました。

HSPは刺激に敏感で、生きづらさを感じやすい特徴があります。限られた人の気質かと思いきや、アーロン博士の研究によると約5人に1人がHSPなのだそうです。

HSPの4つの特徴

HSPには「DOES(ダズ)」と名付けた4つの特性があると、アーロン博士は説きます。

  • 【Depth of processing】考え方が複雑で、深く考えてから行動する
  • 【Overstimulation】刺激に敏感で疲れやすい
  • 【Empathy and emotional responsiveness】人の気持ちに振り回されやすく、共感しやすい
  • 【Sensitivity to subtleties】あらゆる感覚がするどい

「4つのうち1つでも当てはまらない人は、HSPではない」と定義しています。すべて当てはまらない人は、HSPではなく内向的な性格と考えられます。

HSPは病気ではなく気質

HSPを精神疾患と解釈する人が一定数いますが、HSPは先天性の気質(性格の特性)であって病気ではありません。精神的・身体的ストレスの蓄積で脳や精神に障害が起きる「うつ病」や「適応障害」の病気ではないのです。

ただし、ストレスが蓄積されやすい気質上、うつ病を発症しやすいのは事実。ふさぎ込むことが多い、何をしてもつらいなど大きな変化を感じたら要注意です。HSPが起因となり、精神疾患を患っている可能性があるかもしれません。

【10の項目でわかる】HSP診断

HSP診断①|一人や少人数を好む

HSPが最も穏やかに過ごせるのは一人の時間です。感受性が強いHSPにとって大人数の環境はストレスの原因になります。洞察力に優れており、声色や表情をみると相手の本心が読めてしまうのです。

人付き合いは深く狭くが特徴で、信頼できる友人と深く付き合う傾向があります。人が多いほど場の空気を気にするため大人数で騒ぐのは苦手。1対1や少人数のコミュニティを好みます。

HSP診断②|音に敏感

HSPは五感が敏感ですが、特に音を気にします。一般的に突然大きな音がすると一瞬驚くだけで少しすれば心は落ち着きます。しかしHSPは鼓動の高まりが続いたり、漠然とした不安感に襲われたりします。

また、足音や近隣の生活音、秒針が動く音など、耳をすませないと聴こえない小さな音も刺激になります。止まるまで気が散り不快感を覚えるのです。

HSP診断③|優柔不断

HSPは一つの事柄を多角的に考えます。ランチを例にとると、「周りは何を食べるのかな」「自分の料理だけ来るのが遅かったらどうしよう」「食べきれるかな」と、食べたい料理を素直に選べません。

決断後の影響や失敗する確率など、思考回路を張り巡らせすぎて優柔不断になってしまうのです。

HSP診断④|他人を優先する

HSPは思いやり精神が強く、自分より他人を優先します。傷つきやすい気質上、相手も同じことで傷つくのではないかと思ってしまうのです。

「頼まれごとを断ったら不快にさせてしまう」「言い返したら傷つけてしまう」など、自分に負荷がかかっている状態でもなお相手を尊重します。刺激が苦手で穏便に過ごしたいので、自ら火種を作りたくないのです。不穏になるのを恐れて自分を犠牲にしてしまいます。

HSP診断⑤|直感が鋭い

HSPは物事の本質や、相手の本心を見抜く直感力に優れています。会話中に話の間や相手の視線、しぐさなど話の内容以外からも情報を瞬時にキャッチします。

例えば自慢話を聞いていると、相手が求めているリアクションがわかってしまうので、要望に応えようと気疲れしてしまうのです。自分が話をしているときに、関心を持たれているかどうかも直感でわかり、話しにくさを感じます。

HSP診断⑥|タスクが多いと混乱する

HSPはすべてにおいて丁寧で慎重を心がけます。一つひとつに着実に向き合うために計画を立てて臨むため、アクシデントでペースを乱されると強いストレスを感じます。

頭で整理してから作業に取り掛かるHSPにとって、早い対応が求められる仕事やマルチタスクは、想定外のことが多くて処理が追いつきません。「十分な計画を立てないと失敗する」とネガティブに考え、いつまでも手をつけられないのです。

HSP診断⑦|責任感が強い

HSPは完璧でないと不安になるゆえに、責任感が強いです。失敗する自分が許せず「なぜできないのだろう」と、壁にぶつかるたびに自問自答を繰り返します。また、チームプレイでミスが発覚すると「自分が原因かもしれない」とソワソワすることもあるでしょう。

責任感が強い性格を利用されて、周囲から残業やハードワークを押し付けられることも少なくありません。

HSPは言葉選びに非常に気を使います。自分が言われて傷ついた言葉は絶対に使わないのはもちろんのこと、ときに挨拶さえためらいます。例えば朝不機嫌な同僚に対して、普通に挨拶するか相手から挨拶されるのを待つか考えるでしょう。

感受性が強いからこそ、嫌悪感を抱かれないように適切な言葉を選んで過剰に気を配っているのです。

HSP診断⑨|空気を読む

HSPでなくても部屋に入っただけで、空気の重さで雰囲気を感じ取れるかもしれません。特に会議中の緊張感や負のオーラは息苦しく気づきやすいですよね。

HSPは五感が敏感なので、重い空気のほかにも、心地良さや無機質で冷たい雰囲気、フラットな状況など、あらゆる場の空気を感覚で察知しているのです。

HSP診断⑩|芸術に興味がある

HSPは感性が鋭いことから、芸術家気質といわれています。想像力が豊かで人とは違う感性や視点で物事を追求します。自分なりの解釈を深めながら芸術作品と向き合うので、鑑賞中は雑音に気を取られず無心になれるのです。

HSPと向き合う工夫

HSPは精神医学よりも心理学的な概念に近いので、投薬治療ではなくカウンセリングでケアをします。HSPとうつ病は症状が似ていて見分けがつかないケースが多々あります。適切なケアを受けるためにもまずは、カウンセリングをしに行くことをおすすめします。

また、自分はHSPだと感じたら否定せずに受け入れると、気持ちが楽になります。繊細な気質に気づくと見方が変わります。相手に悪意があるわけではなく、自分が敏感なだけだという解釈に変えれば、相手を許せて心が晴れるはずです。

そもそも、HSPの繊細な気質はまったく悪いことではありません。むしろ相手を尊重して気遣いができるのは、思慮深い素晴らしい人格です。ただし繊細に甘えていると自己愛が強くなる恐れがあります。自分も他人も同等に向き合うバランスを意識しましょう。