天照大御神

天照大御神とは

天照大御神のイメージ

天照大御神(あまてらすおおみかみ)は、日本神話に登場する太陽の女神であり、神々が住む天上界の高天原(たかまがはら)を統轄する主宰神で日本最高位の神です。

日本書紀においては、「大日孁貴神(おおひるめのむちのかみ)」の別称で記されています。「大日孁貴神」の「貴」は高貴な存在、「日孁」は日の女神の意味です。また「孁」は「巫」の意味も持つため、天照大御神は太陽神と巫女の2つの能力を備えていると考えられています。 なお、神仏習合思想において、天照大御神は大日如来と同一視されています。大日如来は「大いなる日輪」を意味し、太陽神に起源を持つとともに、菩薩の最高位に位置する仏であることが由来です。

日本の最高神である理由

天照大御神が日本最高峰の神である理由は、太陽の神であり天上界の高天原を統轄する主宰神、つまり唯一無二の優秀な神だからです。太陽がなければ作物は枯果て病気は蔓延し生命力を弱らせます。万物の根源であり生命エネルギーを高める太陽を司るため、「天にあって光り輝く偉大な神々しい神」として崇められてきたのです。

また、 八百万の神々の最高位であるのは、天照大御神が優秀な神だからです。天照大御神は伊邪那岐命(きざなきのみこと)と伊邪那美命(きざなみのみこと)の子どもであり、非常に優秀なことから太陽神として抜擢されました。天照大御神は大和王権国家の皇祖神でもあり、伊勢神宮の内宮を代表として全国各地に祀られています。

天照大御神のパワー|あらゆる願いを成就させる

天照大御神は八百万の神々の最高神であるため、あらゆる願いを成就させる全能の神です。太陽の光は万物の成長を促すことから、子孫繁栄や五穀豊穣を叶えます。また、光を照らし人々を正しい道へと導くため、開運や招福の効果も期待できるでしょう。さらに、天照大御神は、日本を創生した国土平安皇室の開祖です。国土平安をもたらし日本を守り続けています。

誕生|伊邪那岐命の左目から生まれた

天照大御神は、伊邪那岐命(きざなきのみこと)の左目から生まれた子どもです。夜を統治する月神「月読命」と海原の神である「須佐之男命」をきょうだいに持ちます。邪那岐命が自ら生んだ「天照大御神」「月読命」「須佐之男命」の3柱の神は総称して「三貴子(みはしらのうずのみこ)」と呼ばれます。

天照大御神が誕生するきっかけは、禊でした。妻である伊邪那美命を亡くした伊邪那岐命は、死者の国である黄泉の国へ妻を追いに向かいます。「古事記」には、黄泉の国でついてしまった穢れを阿波岐原(あわぎはら)の川で清めていた際に、左目を洗ったところ目から天照大御神が生まれたと記されています。なお、「月読命」は右目、「須佐之男命」は鼻から生まれました。

代表的な神話|「天岩戸の伝説」

天照大御神にまつわる神話には、「天岩戸(あまのいわと)伝説」があります。天照大御神が悪さを働く弟「須佐之男命」にしびれを切らし、高天原の奥深い場所にある洞窟「天岩戸」こもったのが始まりです。天照大御神がいない世界は、終日闇に包まれて混沌としてしまいます。

天照大御神を何とか外に出すために、知恵の神である「天八意思兼命(あめのやごころおもいかねのみこと)」が、岩戸の周りで祭りを行い天照大御神の気を引くよう提案します。芸能の神「天鈿女命(あめのうずめのみこと)」が桶の上に乗っておもしろおかしく踊ると、大盛り上がりで笑い声が止みません。

すると、計画通り物音を聞いた天照大御神が、岩戸から顔をのぞかせました。顔をのぞかせた瞬間に、天之手力男神(あめのたぢからおのかみ)により岩戸から引き出され、ようやく天照大御神を外へ戻すことに成功したのです。天岩戸の出来事を起こした須佐之男命は、八百万の神々から厳しい罰を受けて高天原を追放されてしまいました。

天照大御神と三種の神器

三種の神器とは、「八咫鏡(やたのかがみ)」「八坂瓊勾玉(やさかにのまがたま)」「草薙剣(くさなぎのつるぎ)」のことです。古代より皇位とともに継承される皇室の宝物で、現在の皇室の即位式では三種の神器の形代を使用して儀式を行います。三種の神器はすべて天照大御神に通じているのです。

「草薙剣」は、須佐之男命が出雲で八岐大蛇を成敗した際に、八岐大蛇の尾から出てきたため須佐之男命が天照大御神に献上しました。「八咫鏡(やたのかがみ)」は天岩戸の伝説に由来します。天照大御神が外の賑わいを気にして岩戸からのぞいた際に、「あなた様より美しい神がきました」と言い、天照大御神の姿を映しました。天孫降臨の際に「自分の魂とこの鏡を祀ってほしい」伝えたと記されています。また、天照大神が岩戸から出てくる際に、天地が真っ暗で光がないため「八坂瓊勾玉」を飾って導き出しました。

天照大御神の男神説

日本書紀において天照大御神は「太陽神で女神」と記されているため、女の神という認知が一般的です。しかし、本当は男性の神だと唱える説も少なくありません。

説①|神道における「陽」と「陰」

天照大御神は「大日孁貴神」という巫女を示す別称があることから、太陽神に仕える巫女が昇華して日本最高位の天照大御神となったとされています。しかし、神道における「陽」と「陰」の観点では、男性が「陽」で女性が「陰」の属性です。男神である伊邪那岐命は「陽神(をかみ)」、女神である伊邪那美命を「陰神(めかみ)」と呼んでいます。

説②|天岩戸の伝説の一節

天天岩戸の伝説の一節から、天照大御神が男神であるとも考えられています。天照大御神を岩戸から外へ出す際に計画したのが、天鈿女命による踊りでした。八百万の神々が天鈿女命の踊りに盛り上がった理由は、桶の上に乗っておもしろい踊りをしたからだけではありません。上半身裸でやや卑猥な踊りを披露したからです。つまり、岩戸から出す作戦は、天照大御神が女神の裸に好奇心を持つと考えて練られた作戦だったとされています。

説③|歴史に基づく説

一方で、平安時代に伊勢神宮へ奉納する装束が男性用だったことや、江戸時代に出版された「鯰絵(なまずえ)」や木彫りの仏像「円空仏」などでは、天照大御神は男性とされています。 千年以上続く「京都祇園祭」の岩戸山は御神体が三柱あり、伊邪那岐命・手力男命・天照大御神はすべて男性で作られています。また、世界の最高神の多くは男神であり、最高神が女性である日本は珍しいと言えます。たとえば、古代エジプトの太陽神であり最高位の神である「ラ―」は男神です。ほかにも、宇宙の万物を支配する中国における最高神「天帝」、天空神で最高位のギリシャ神話の「ゼウス」、ローマ神話の主神「ユピテル」なども男神に当たります。