降霊術

降霊術のイメージ

あなたは「降霊術」と聞いて、どのようなイメージを持ちますか?実際のところは文字通り、霊媒師が死霊や生き霊、ときには神仏などを自らの身体に憑依させる術のことをいいます。霊界から霊を呼び出し、この世界に生きる人間が抱える何かしらの内なる問題や悩みを解決してくれるというもの。例えば、「私はいつ結婚できますか?」「理想の相手とはいつ出逢えるのですか?」「人間関係がうまくいかないのですが」「複雑な三角関係に悩まされている」などの日常的な問題を解決させようとするものです。かつて霊媒たちは降霊術を用いて人々のあらゆる悩みを解決してきました。そんな降霊術について少し掘り下げてみましょう。

降霊術とは

降霊術とはその名の通り、すでに亡くなった人間の霊や、生霊、自然霊などの霊を降ろす霊能術です。降霊術は、自らの身体にその呼び出した霊を憑依させることから始まります。そして、降霊術を行っている霊媒は、依頼者に対して、憑依させた霊との間を取り持つことになります。いってみれば、通訳のポジションになりますね。

日本で降霊術といえば、下北半島や五所川原の「イタコ」という存在が有名です。イタコは自らの身体に霊を憑依させるだけでなく、その霊の声をそのまま伝えることができます。霊自身がイタコの身体を用いて自ら語るということもできるといわれています。一見、イタコはまるで別人のようになり、霊自身の語り口調になる様子は、誰もが驚きを隠せないといいます。

降霊術である口寄せ ~神口・仏口・生口~

日本において「降霊」という能力は、実にさまざまな言い方、つまり口寄せ、神口、仏口、生口などの種類があります。

口寄せは、先にご紹介したイタコが行う降霊術として知られている方法です。イタコは、口寄せという方法を用いて、未来を予知したり、心の透視を行ったりすることを目的に、実にさまざまな霊を呼び出します。中には、死者の霊だけでなく、今まさに生きている人間の霊である生き霊を呼び寄せたり、神仏の霊までをも呼び出すことができたりするイタコもいます。生き霊を口寄せする場合などは、本人が隠していることや、願望などをそのまま聞かせてくれるので、相手が浮気をしているかどうかや、自分に対する思いの有無などを伺い知ることができます。

神口や仏口、生口というのは、実はいずれも口寄せの一種で、それぞれ神口はご神霊を身に憑依させる儀式のことをいい、仏口は死後の霊界から成仏した霊を呼び出して憑依させる儀式。さらに、生口はまだ死後まもない霊や、生き霊などを口寄せする場合に使うものです。

降霊術を行っている霊媒が体験していることとは?

この降霊術を行っている間、霊媒はどのような状態になっているのでしょうか。霊媒によれば、霊を自らに憑依させることによって、その霊が望んでいること、そして霊が訴えかけようとしていることなどが自ずと分かるといいます。不思議なものですが、霊を降ろしている間じゅう、霊媒は降ろした霊そのものと同化し、降ろした霊のことすべてを理解することができるといわれているのです。そして、亡くなった者の降霊であれば、生前の姿がはっきりと見えるといわれています。ただ、厳密に言えば、感じ方は多少違ってくるものでもあります。

古代の降霊術

ところで、降霊術のことを、英語ではネクロマンシー(Necromancy)と呼びます。これは、古代ギリシャ語からきている言葉で、死体・死人を意味する「ネクロス」と、予言や占いを意味する「マンテイア」に由来するものだといわれています。世界においての降霊術は、いわゆるシャーマンが先祖の霊などを召喚するシャーマニズムに通じるものがあるといわれています。

古代バビロン、エジプト、ギリシャ、ローマで行われていたとされる降霊術は、紀元前700年頃に著されたとされる、ホメロスの「オデュッセイア」にその文学的記述が見られます。降霊術は夜、火を燃やした穴の周りで行わなければならないという、儀式についての記述もあるといわれています。

降霊術の全盛期、中世

降霊術は、中世に全盛期を迎えたといわれています。中世の降霊術は、アラビアの影響に由来するといわれる天文魔術といわれるものと、キリスト教やユダヤ教の教義に由来する悪魔祓いを統合したものだと信じられていたそうです。

当時の降霊術師の多くはキリスト教の聖職者の一員で、意識の操作や幻影、知識の3つが、悪霊の力によって実現できると信じられていました。当時、悪霊によって遂行可能とされていたのは、他人に苦痛を感じさせることや、愛を燃え上がらせること、憎しみに駆り立てること、何らかの行為を行わせたり、行わせなかったりすることなどでした。中世における降霊術の特徴として、通常、生贄が必要であったことはよく知られていることです。

そして現代の降霊術

降霊術は、現代に行われている交霊会チャネリングなどとも通じるところがあるといわれています。交霊会とは、霊媒を介して死者とのコミュニケーションをはかる会合のことで、1840年代にアメリカで始まり、1850年代にはヨーロッパのブルジョワサロンで盛んに行われていたといわれています。

また、チャネリングとは、高次の存在とのコミュニケーションを指し、死者の霊に限らず、天使や自然霊、地球外生命などからの情報受信をすることです。今も昔も、世界中で降霊術と似ている儀式が執り行われていたことが分かります。