グリモワール

グリモワールとは

グリモワールのイメージ

グリモワールとは、フランス語での呼び方になります。ヨーロッパの魔術書または魔術の指南書のことをグリモワール、あるいはグリモアと呼びます。日本では奥義書、魔導書、魔法書という意味での訳が近いでしょう。同じ魔術系でも、錬金術や占星術、また哲学的な魔術論はグリモワールとは言いません。グリモワールは、中世後期から19世紀に亘りヨーロッパで流布され、霊的な力を表す内容が多いのが特徴です。降霊術や神霊魔術などに詳しく、儀式や呪文が詳細に明記されており、儀式魔術に関する鬼神学などもグリモワールの書物には多いとされています。また、おまじないなどもグリモワールのカテゴリに入るとして良いでしょう。

グリモワールの歴史

16世紀後半から17世紀にかけての魔女裁判(魔女狩り)が盛んだった時代、グリモワールが公になることはなかったとされています。なにしろ魔術に関する書物を作ったりすることは、それイコール魔女であると疑われる危険があったからです。しかしその一方で、宝探しのヒントや異性との恋愛に関するおまじないに関して、グリモワールは有効とされていました。隠された秘宝には霊的な力があるとされ、そのお宝を探し出すのに魔術が必要とされたからです。その魔術の記述があるグリモワールは、実に高値がついたと言われていて、一部の人の間で密かにグリモワールは広まっていったのでした。

その後時代が進むにつれ、グリモワールは一般的になっていきます。それまでは聖職者や宮廷の人々の書物であったグリモワールは、おまじないが一般化するにつれ、数々のまじないを集めた通俗的なグリモワールが作られるようになり、インテリ層に広まって、やがてそれは一般の人々も手に取るようになったのです。民間の占い師もグリモワールを参考にするようになり、時代とともに魔術書であるグリモワールの存在は特別なものではなくなり、通俗的なグリモワールが世の中に多く出回るようになっていきました。

グリモワールの書物

中世においてグリモワールとして読まれ、今でも書名が残っている魔術書がいくつかあります。

『ホノリウスの誓いの書』
降霊術の手引書。グリモワールの初期の書物で、13世紀にオリジナルが書かれたと言われています。
『アルス・ノトリア』
天使ソロモンに授けた祈り、また人が持つべき知識の心得、言語、記憶力の強化、幻視体験などが書かれた書物です。

また、ルネサンス期から19世紀までのグリモワールで、著名なものは以下の通りとなります。

『ソロモンの鍵』
イタリアやイギリスで多く流布したソロモンの魔術書。いちばん古いものはギリシャ語版「ソロモンの魔術論」。17世紀から19世紀にかけて「ソロモンの鍵」と呼ばれる様々なバージョンの写本があると言われています。
『レメゲトン』
「ソロモンの鍵」の中の4,5種の魔術をセレクションしてまとめた書です。

実は20世紀に入って以降も、新たなグリモワールは誕生しています。幻想文学を発端にしたフィクションから魔術を創りだそうと試みた書物がそれにあたります。特にサイモンというオカルティストが序文を執筆した『ネクロノミコン』は、魔術文献として後発の作りものですが、よく出来ていると世界的に高い評価を受けています。