アポートとアスポート

何もないところに物体が出現する現象

アポートとアスポートのイメージ

アポート」とは、何もないところから物体を出現させる超能力の一種です。その人がいる地点から遠く離れた場所にある物体を取り寄せます。一方「アスポート」とは、目の前にある物体を消し去り、別の地点へ転送する超能力のことです。この2つの現象はいずれも「遠隔瞬間移動現象」の一つで、目の前の物体が瞬時に移動します。その際、他の物質を貫通するという、常識ではとても考えられない現象が起こっているのです。

物体が瞬間移動するメカニズム

物体が瞬間移動する原理として、物体が一時的に分解され、非物質状態となり、目的地へ移動し、その場所で再結合するという過程が考えられています。しかし、どのようにして物体を非物質化するのか、なぜまた再結合できるのか、その本当のメカニズムは明らかになっていません。今回は様々な仮説の中から、「エクトプラズム」を使って霊界の霊が引き起こしているという説をご紹介します。

エクトプラズムは、幽界下層の未熟霊が、霊媒から幽質素と生体エネルギーを取り出し、これを自らの幽質素と霊的エネルギーを加えることによって作り出されます。物体を瞬間移動させる際、まずこのエクトプラズムを物体に接触させ、物体を霊的活性化させます。霊的活性化が起こると、物体の原子の振動が一気に高まり、一時的に物体が非物質化されます。そして、その非物質化した物体をエクトプラズムで包んで目的地へ移動させ、目的地で物体の原子の振動を弱めることで再結合させるのです。この状態を私たち人間の立場から見ると、「物体が何もないところから出現した」という現象につながります。

奇跡の霊能者 長南年惠とは

最後に、実際にアポートを起こしたとされている霊能者をご紹介します。その霊能者の名前は長南年恵(ちょうなん/おさなみ としえ)。1863年、現在の山形県鶴岡市で生まれました。もともと少食だった彼女は、20歳を過ぎた頃からほとんど食事を摂ることなく、排せつ物もありませんでした。汗もかかず垢も出ず、お風呂に入らなくても髪や身体はいつも清潔で、常によい香りに包まれていたと言います。

彼女はその類まれなる才能で数々の奇跡を起こしましたが、特にアポートの能力はずば抜けていました。何もないところから、大半の病気を治癒させる「霊水」を出現させたのです。病気を患った人々は、こぞって彼女のもとに空の瓶を持っていきました。彼女が人々の前で祈りを捧げると、密封された何十本もの瓶が水で満たされたと言います。霊水の色は赤や青、黄色などそれぞれの瓶によって異なり、瓶の持ち主の病気をほぼ完治させるのです。ただし、不治だと診断された人や、冷やかしの気持ちでやってきた人の瓶に水が満たされることはありませんでした。

ところが、1895年、年惠は医師の資格も持たないのに、霊水を使って病気治療と称する行為を行ったとして逮捕されてしまいます。60日間勾留されましたが、その期間中にも何もない空間から霊水や御守、経文などを取り出し、人々を唖然とさせました。懐疑の目を向けられたことが、反対に彼女の能力を真に証明することになったのです。彼女は1907年、45歳でその短い生涯を終えます。霊水によって人々の病気を治癒させた彼女の偉業は、後世まで語り継がれました。生まれ故郷である山形県鶴岡市の南岳寺の境内には、「長南年恵霊堂」という霊道が遺されています。