ジャーンの書

世界最古の写本

ジャーンの書のイメージ

ジャーンの書(Book of Dzyan)とは、近代神智学の創唱者であるヘレナ・P・ブラヴァツキー(1831~1891年)(以下、ブラヴァツキー夫人)が実在すると主張する“世界最古の写本”のことです。英語を和訳する際、「ドジアンの書」「ジャンの書」「ヅヤーンの書」と表記されることもあります。

ブラヴァツキー夫人によると、ジャーンの書はヤシの葉に書かれており、アトランティスの古代叡智を伝えるための書物で、「センザール語」という忘れられた言語の象形暗号によって記されていると言います。さらに、1888年に彼女が発表した著作『シークレット・ドクトリン(秘密教義)』は、このジャーンの書からも多く引用していると主張しています。しかしこれに対して、アメリカの学者ウィリアム・エドワード・コールマンは、「『シークレット・ドクトリン』に記されているジャーンの書の内容は、他の様々な文献からの寄せ集めに過ぎない」と批判しました。実際にブラヴァツキー夫人が書いたジャーンの書の内容が、どのような資料を基に作成されたものなのかは明らかにはされていません。そして、ブラヴァツキー夫人はこの著書を完成させることなく、1891年に亡くなりました。

ジャーンの書は実在するのか?

ジャーンの書は実在するのでしょうか、しないのでしょうか? ブラヴァツキー夫人の死後も、『シークレット・ドクトリン』をめぐっては様々な議論がなされました。一説では、ジャーンの書は「ギューテ(Kiu-te)」と呼ばれるチベット仏教タントラ(密教聖典)で、ブラヴァツキー夫人はこのチベット文献を基にしたのではないかと結論づけられました。この文献内の記述と『シークレット・ドクトリン』内の記述に似通った部分があることから、この説が最も有力だと考えられています。

また、ジャーンの書はクトゥルフ神話にも登場しており、「もしジャーンの書が実在するのであれば、同じくクトゥルフ神話に登場する『ネクロノミコン』という魔導書の原点なのではないか」という新たな憶測も呼んでいます。