英国心霊現象研究協会
英国心霊現象研究協会 (The Society for Psychical Research)とはにケンブリッジ大学トリニティ・カレッジ内で心霊主義に関心のあった三人の学寮長によって設立された世界初の本格的な心霊研究機関です。初代会長に就任したのは、哲学と倫理学の専門家であったヘンリー・シジウィック教授。この協会が設立されたは心霊研究家の間では超心理学元年とされています。また、同協会はその頭文字をとって一般に SPR と呼ばれています。
SPRの設立目的は当時、隆盛を極めていた交霊会での心霊現象や超常現象を科学的に検証し、その真相を究明することにありました。協会が研究対象とした分野を細目に分けると、
- 「テレパシー現象」
- 「催眠術現象」
- 「霊媒現象」
- 「幽霊の出現現象」
- 「降霊術」
- 「心霊現象全体の歴史」
この六つであり、この各分野において協会会員の専門家たちが様々な超常現象の観察と究明に励んでいました。会員の中にはキュリー夫人や数学者のチャールズ・ドジソン(ルイス・キャロルの本名)なども名を連ね、とくに設立から三十年あまりの間は活発な活動を続けていたと言われています。
またにはアメリカにおいて心理学者のウィリアム・ジェームズらによって米国心霊現象研究協会 (ASPR) が設立され、にはSPR の正式な支部として認められました。
この協会の支持者の中には、カール・グスタフ・ユングを初め、アルフレッド・テニスン、マーク・トウェイン、J・B・ライン、アーサー・コナン・ドイル、アルフレッド・ラッセル・ウォレスなど当時の錚々たる著名人・芸術家・文化人の名が連なっています。彼らは皆、心霊の世界に魅せられ 正統的な科学のアプローチをもってその原理を解き明かすことができると信じていたのです。しかし、実際には際立った成果を挙げられぬまま、19世紀末の一大心霊ブームの衰退と共に協会の活動も徐々に衰えていきました。
心霊現象の謎を解き明かすには、当時の科学理論ではまだ不十分だったのかもしれません。しかし今日、量子力学の世界観を根拠にして見えない世界への新しいアプローチが再び始まっています。それが80年代から勃興してきたニューサイエンス運動やニューエイジ運動であり、19世紀末にSPRが提起したスピリチュアルに関する問題は、新たな理論体系の元で再び洗い直されようとしているのです。
設立当初の熱気こそありませんがSPRは現代に至るまで存続しており、にはESP実験で有名な超心理学者、故J・B・ライン博士の夫人であるルイザ・エラ・ライン女史が会長に就任した他、からまではロンドン大学の数学および天文学の教授バーナード・カー博士が同職を務めていました。なお現在の会長は超心理学研究家であり科学紙執筆者のリチャード・ブロートン氏です。
わずかながらとは言え、21世紀においても古き良き時代の心霊研究の灯はかろうじて受け継がれています。
◆オススメサイト
Society for Psychical Research - 心霊現象研究協会(英語)
英国心霊現象研究協会の公式サイトです。非会員向けの公開講義のスケジュールや、プロジェクトの紹介など。