マナ

「マナ」の神秘的なパワーとは?

マナのイメージ

ハワイをはじめとした太平洋の島々において、根付いていた原始的な宗教の中に登場する“神秘的な力の源”のことを「マナ」と呼びます。いわゆる、超能力や魔法などに匹敵する不可思議なパワーのことを指しています。このマナについて、概念やその周辺を探ってみましょう。

神秘的とまでいわれるマナとは、果たしてどのようなものなのでしょうか?マナは、病気、ケガなどにさらされた人に対して注入すると、より良い状態に変化するといわれています。明確な形を持ってはいませんが、人間をより強くて良い状態にするもの、ということができます。マナは「宿る」とか「持つ」とかで表現しますが、マナを言葉で定義づけるのはなかなか難しいとされます。語句としてのマナとは名詞ですが、形容詞や動詞でもあるといわれているし、一方で資質、実体、力といった意味でも通じることから、「マナとはこういうものだ」とひとつ所に置くことができません。また、マナは人間だけでなく物にも宿ります。もし人間にマナが宿れば、霊能力を発揮することになります。また、一般的には、人間が持つ魅力そのものを指すこともあります。さらに、マナはそれ自体が社会の中の一部分として機能するともいわれています。このときのマナは、社会の中で、ものごとを動かすパワーとして捉えられます。

マナが宿るとどうなるか?

ハワイに伝わるヒイアカ神話によれば、マナが人間に宿ると肉体が強靱になり、戦争やスポーツなどでは優れた結果を出し、非常に高貴な存在になるといわれています。また、古代の人たちが長い旅を続けられたのは、各処で迫りくる様々な困難をマナの力で乗り越えたからだといわれています。

マナは人に宿りますが、儀式を行えば、自分のマナを他者に受け渡すことができるといわれています。実際、ハワイの神話に登場するカフナと呼ばれる神官や医師などの専門家たちの中でも、特に強力なマナを持っていた人は、マナを儀式で相手の口や額に息を吹きかけるだけで受け渡すことができたといわれています。しかしながら、このマナを伝授する儀式は、一般庶民ではなかなか難しかったようで、死ぬ間際にだけ自分のマナを儀式で子どもへ託すことができたと伝えられています。ちなみに、マナが口移しで受け渡されていたのは、唾液がマナを運ぶことができるという考え方があったからです。

ところで、マナを人から受け渡されたとしても、その人の行いによってはマナを消失してしまうこともあるとされています。マナが失われるシーンの一例を挙げると、正しく仕事を行わなかった場合、いわゆる違法なことを行ったときマナは消えてしまいます。例えばヒーリングカフナと呼ばれるヒーラーの専門職の人が、人々を癒す職業であるのにも関わらず平気で患者を見捨てるなどの行為は、マナの消失に値するのでその力を失います。また農民であるにもかかわらず、農作業や毎日の神への祈りをさぼれば、たちまちマナをはく奪されるのです。

マナの種類

マナは超自然的な原始的エネルギーとして、漠然としたイメージで語られることが多いですが、それぞれには種類があることが分かっています。

マナは通常、生きている人間に宿るといわれていますが、マナを持つ人間が死んだとしても、その遺体や骨にはまだマナが残っているといわれています。特に王族のマナは非常に重要視されており、例えば、王の影を踏むことで王のマナの一部が影を踏んだ人間の体に入ってしまう、とまでいわれていました。そのことから古代ハワイにおいては、亡くなり骨となった後も、そこに宿るマナを守るために丁重に扱われていたといいます。ハワイの王様で有名なカメハメハ大王をはじめとしたハワイの王族すべての墓所が、現代に至っても未だに明らかになっていないのは、骨に宿るマナを狙った輩に盗まれ悪用されないために、あえてその場所を隠したことが理由とされているくらいです。また、女性の場合、子を産むことができるという点から、もともと優れたマナを持っているといわれていました。月経の間は特にその力が強まるともいわれています。マナは、人間だけでなく、生命すべてに宿るといわれています。動物はもちろん、植物も例外ではありません。特に、効能のある薬草などに宿るのだといいます。

マナが宿る場所

ハワイの各所では、観光地としても、マナが宿る場所として知られている場所が多くあります。例えば、オアフ島のワイキキの中心部にあるカフナ・ストーンは、タヒチ島からオアフ島へと渡ってきた4名のカフナが、マナを石に込めたものだと伝えられています。その神秘的な石のパワーをリアルに感じ取るために、今でも多くの観光客がつめかけています。

また、ハワイ北部にあるコハラ山脈の谷の数ある谷のひとつである神秘的なワイピオ遺跡も、マナが宿る場所として有名です。断崖絶壁に囲まれ、王家の谷ともいわれている名所です。実はこの地は、あのカメハメハ大王が幼少時代に過ごした場所といわれており、ハワイでも最も神聖なる場所とされています。今では、に起きた津波の影響によって、多くの人たちが去ってしまいましたが、かつては非常に多くの人たちが住みついていたといわれています。この地が神聖なる場所といわれるゆえんは、ハワイ神話の多くの舞台にもなっていることにも関係しています。津波だけでなく、それ以後に起きたの大洪水の際、谷に住んでいた人々が一人として命を落とすことはなかったことから、マナの神秘的なパワーが人々を守ったのだと、今でも信じられています。

マナの創唱は?

このポリネシアの原始宗教に存在していたマナがヨーロッパ社会で創唱されたのは、における英国の人類学者R=H=コドリントンによるものだったといわれています。ヨーロッパに伝えられたマナは、後にメラネシアの語源となったといわれています。当時、特にマナに焦点があてられたのは、アニミズムやトーテミズムなどと共に、どの信仰が最も古いものなのかという論争が盛んだったことが理由だといわれています。マナのほうがアニミズムに先行していたのではないかなど、原始宗教をめぐって様々な論議が交わされました。

現代においてもマナは、非常に広い概念を持ち、いまだに謎の多い神秘的なパワーの象徴として扱われているのです。