前世療法

前世療法とは

前世療法のイメージ

人の心の中には、本人さえ知らない記憶が残されているという考えがあります。その記憶は「前世」の経験の記録とされ、現世に生まれる前に体験した人生に基づいています。これらの前世が現世の人の生活に影響を与えることができると考え、それを病んだ心や体の治療に用いることを前世療法といいます。

普通、人は自分の前世の記憶を持ちません。そのため、前世を知るには「催眠療法」を用いる必要があります。「退行催眠」と呼ばれる催眠状態で記憶を遡るよう誘導することで前世を知り、それを現世での問題や病気の治療に役立てるのです。

前世治療でできること、できないこと

どれほど調べても治療を受けても、精神的な悩みや心や体の病の原因が現世の中では見つからないことがあります。その原因は、現世ではなく前世にある可能性があると考えることもできるのです。前世における心理的・肉体的な体験が、前世の心や肉体にも影響を与えているとしたら、それを癒すことができるのもやはり前世なのです。前世治療を受けることで、人はこれまで自覚できなかった前世における事実を知り、それに納得して深く癒されるのです。原因不明の心的外傷(トラウマ)に対する治療としても有効とされています。

しかし退行催眠を行ったからといって、必ず前世まで退行できるとは限りません。催眠術師や心理治療師らの能力や、治療を受ける人の心の強さなどによって、遡れる過去と遡れない過去とが存在しています。さまざまな条件が揃った場合には、原始時代にまで前世を遡ることもできたという記録が残されていますが、一方で、催眠療法がきかない人もいれば、退行できるのが現世の過去だけに限られる人もいます。残念ながら、すべての人の全ての症状に、前世治療が有効なわけではないのです。

前世リーディングとの違い

前世治療と前世リーディングは、時に混同されてしまいがちですが、両者には大きな違いがあります。前世治療は催眠術師や心理治療師らの助けは借りますが、自分自身で前世のイメージを「見て」「感じる」ことのできる心理療法です。一方で前世リーディングは、霊能者などに読み取ってもらった前世を、文字や言葉で間接的に知るものです。自分の意識の下に自分で潜り込んで前世と向かい合うのと、他人から教えられるのとでは、その目的も効果も異なってくるのは当然です。

前世治療と虚偽記憶

前世治療で得た記憶が、実は他者から、または自分自身によって虚偽に作られた記憶である場合もあります。催眠状態で受ける治療だけに、催眠術師や心理治療師らの影響を受けやすく、また人は無意識に自分の願望や欲求に沿った記憶を作り出して、記憶を改ざんしてしまうこともあるのです。前世治療で知った内容を歴史的事実として客観的に確認できるとは限りません。そのため、前世治療によって知った「前世らしき」記憶が必ずしも正しい前世とは限らないという指摘や批判があることも知っておくべきでしょう。

前世治療と輪廻

人は輪廻の中で繰り返し生を受けているという考えがあります。それに従うと、前世は限りなく遠く原始時代まで続いていることになります。長い前世の中でただ一つつながっているのは魂です。宗教的にはこの輪廻から脱することを追い求めることもありますが、前世治療では、現世に悪い影響を及ぼしている輪廻の中の出来事を思い出して解決することで、治療を施します。輪廻からの脱却ではなく、輪廻によって受け継がれてしまったから逃れることが前世治療の目的といえるでしょう。

また、前世治療の特徴として、誕生以前の記憶を辿る時に必ず死を体験します。より深く遠い前世へと遡れば、死の体験数も増えていきます。人が死を恐れるのは、それを体験したことがないからだと考えられています。死への恐怖から、生きることまでも怖くなってしまう心の病の治療には、前世治療で死を体験することが効果を発揮することがあります。死を繰り返してきた上に必ず生があることを知り、恐怖から抜け出せるのです。

前世治療は、現代医療では癒すことのできない、心や体のトラブルを治療する方法として注目されていますが、一般的に医療としては認められていません。あくまで民間療法として行われている例がほとんどです。その点は、霊能力を用いた治療と同じで、実際に治療を受ける際には、その施術者や方法について十分な調査が必要であり、施術者と被術者の間では、信頼関係を含めた相性の良さという重要なポイントをクリアしなければならないでしょう。