浮遊霊

浮遊霊について

浮遊霊のイメージ

人の肉体には、「霊」が内在しているという考えがあります。通常は体の内側にある霊ですが、死などをきっかけにして体から離れてしまうことがあるとされます。霊そのものは実体を持たないため、何かに憑りつかないかぎりは彷徨う、つまり浮遊するしかありません。この肉体から離れて浮遊した状態の霊を浮遊霊と呼びます。

宗教などの文化によって考え方や表現は違いますが、人は死後、別の世界へと導かれると考えられています。肉体から離脱した霊は、本来は次に行くべき場所が決まっているのですが、時に迷子となってしまうことがあります。それが浮遊霊です。また、肉体から離れた状態とは必ずしも死だけを意味しません。苦しみや悲しみ、妬みといった負の感情に支配された人の霊は、時に生きたままで肉体から離れて彷徨います。これも浮遊霊の一つだと考えられています。生きた浮遊霊は、悪夢から醒めるように再び肉体へと戻ることが多いのですが、戻ることができなくなる例もあります。

浮遊霊はなぜ生まれるか

誰もが余命を宣告され、覚悟の上での死を迎えるわけではありません。あまりに突然過ぎて自分が死んでしまったことに気づかないことや、死んだことに納得できないことも非常に多いのです。自分の死を納得できない霊は、たとえ導きがあっても、目の前に行くべき道が示されていても、それが見えなかったり拒否したりで、そのまま現世に留まろうとします。その結果浮遊霊になってしまうのです。

浮遊霊になる原因に、死を受け入れられないことを挙げました。これは、現代社会において、死について考えたり議論したりする機会が極端に少なくなり、本来身近な存在であるべき死を避けて生活していることが関係しています。宗教や民間信仰などがもっと身近だった時代には、死そのものが身近であり、死がどんなもので、何を意味し、死後はどこへ行って何をすればいいのかを多くの人が理解していました。死に際して浮遊霊とならないためには、生前から死についてより深く知っておくことが大切なのです。そんな心の準備が間に合わずに死んでしまった場合には、残された人が死者に死を教えて納得してもらうことで、浮遊霊となることを防げる可能性があります。葬儀の場で読まれるお経の中には、死を伝え納得させる内容が含まれています。さらに、死後にどんな導きがあるのか、どこへ行けばいいのかも伝えることができます。葬儀に連なる関係者たちが、心を込めて経を読み伝えることで、死者を確実に死後の世界へと導くのです。

浮遊霊と地縛霊

浮遊霊と地縛霊はよく似た性質も持ちますが、違う面も持っています。どちらも肉体から離れた後に、本来行くべき場所へと行くことなくこの世に残ってしまった霊ですが、浮遊霊は宛てもなく彷徨うのに対し、地縛霊は特定の場所や物にこだわり(執着)を持ってしがみつくか逆に縛りつけられた状態になっています。ただし、浮遊霊も地縛霊もこの世に残った理由が分かっていてもいなくても、それ解決することは自力ではできず、同じく自力だけではこの世を去ることもできません。

浮遊霊の多くは死を認めず生に対して強い未練や執着を持っています。そのパワーは、未練や執着の対象となる人やものに直接向けられるとは限りません。多くの場合、彼らはただ彷徨うばかりで、目的物や目的地を見つけて能動的に活動することはできません。かわりに、近くを通りかかった人や波長や波動の合う人に憑依することで、生となんらかのつながりを持とうとします。その結果、憑依された人には霊障が起こります。この霊障、多くの場合は軽いものが多く、肩こりや頭痛、だるさなどの疲れや風邪の症状とよく似たものや、ラップ現象や耳鳴りなどの小規模な心霊現象が夜を中心として現れます。重大な問題になることが少ないため、気づかないまま長く憑りつかれていたり、いつの間にか離れていたりすることも多いようです。これらの霊障を防ぐには、健康を保つこと、心を明るく冷静に保つこと、さらに「何とかしてあげたい」という同情心を持たないことが大切です。

浮遊霊を救う方法

浮遊霊となってしまった霊を救い出すのは容易ではありません。第一に、浮遊霊たちは自身が霊であることに気づいていないことが多く、生者がどんな働きかけをしても耳を貸しません。半端な同情心や手出しは、浮遊霊を救えないだけでなく、自分自身を傷つける結果ともなります。能力と経験のある修験者や霊能力者が、浮遊霊に死を認識させて、成仏の手助けができることもありますが、残念ながら浮遊霊の多くは何らかの偶然やきっかけによって自ら死を悟り、行くべき道を見出さない限りは浮遊し続けることが多いといわれています。ただ、生者が死者のことを思い、祈りを捧げるという供養は、浮遊霊にとって癒しともいえる行為です。直接の救いにはならなくても、霊を慰めることはできます。

浮遊霊の多くは、大きな力を持つこともなく、生者への影響も大きくはありません。しかし、時には波長や波動が合ってしまったために憑りつかれて辛い思いをすることもあり、また自分の近しい人が浮遊霊になっているとすれば、それだけでも十分に悲しいことです。だからこそ、人は生前に死を避けられないことを認め、死について学んでおくことが大切です。それが、自分自身が浮遊霊になることを防ぎ、浮遊霊と出会ってしまった時の心がまえにもつながっていきます。