類感呪術

類感呪術のイメージ

類感呪術とは、文化人類学者のジェームズ・フレイザーによって言われ始めた、呪術の性質を現す言葉になります。「類似したものは互いに影響しあう」という発想のもとに生まれた呪術で、求める結果を模倣する行為により目的を達成しようとする呪術であるとされています。なお、もうひとつの呪術には、感染呪術があります。これらの言葉はフレイザーの著書である金枝篇に綴られています。

類感呪術の例

類感呪術として、わかりやすく例を挙げると、日本で有名な「丑の刻参り」になるでしょう。これは憎んだり恨んだりしている対象を藁人形に見立てて、丑の刻(午前1時~3時頃)に、神社の御神木にその人形に釘を打ち込むとその相手にダメージが与えられるというもの。人の形に類似した藁人形がその人そのものとなり、藁人形への影響がその人へ伝播するというわけです。また、政治劇で風刺すべき相手と同じような登場人物を配し、その者に悲惨な末路を与えるというのも類感呪術の一種と言えます。類感呪術は、恨みを持った相手に直接呪いをかけるのではなく、その者の代替品に対して強い衝撃を与えたり、傷つけたりする行為で呪術を成立させることというわけです。

類感呪術はプラスにも効果があるが……

しかし、類感呪術そのものは、怨念や呪いといった人にとっては悪しき感情を類似したものには限りません。運気を上げる行為にも利用されているのです。たとえば、オーストラリアの諸部族は、食料確保ためにトーテムポールに動物の絵を描き、叫び声や行動を真似したりして、動物の増殖を願う行動を儀式的にしていたと言われています。これに似た類感呪術に、カーゴ・カルトというものがあります。

カーゴ・カルトとは、必要なものを積んだ神や先祖が地上に降りてくるという信仰ですが、実はこれは、類感呪術と発想とエネルギーレベルは同じと言えるでしょう。例えば、藁で必要な船を作れば、その船が現れるというもの。ただ、落とし穴もあり、かつて自らがしていたように汗水たらして富を得ようとせず、カーゴ・カルトの発想で「それらしき物」を作りそれを崇めて、つまり楽をして富を得ることを望んだ人々は、そのとき持っているささやかな物を放棄する羽目になってしまうとも言われています。主にニューギニア島では、カーゴ・カルトが頻発してしまったことで、元々受け継がれてきた精霊信仰が覆されるほどの事態になったとさえ言われています。