恐山大祭

恐山大祭のイメージ

毎年の5日間、青森県下北半島のむつ市にある恐山(おそれざん)で行われる恐山大祭には、近辺に住むイタコたちがみな集まってきます。そして、死者の霊をこの世に降ろすための「口寄せ」を行ってくれます。この恐山大祭にはこのイタコ「口寄せ」を目的に全国から大勢の人が押し掛け、イタコテント前に長蛇の列を作ります。わずか5日間の恐山大祭期間中には、例年2万人以上の参拝客がこの恐山にやってくるのだそうです。恐山にはまた、10月上旬の恐山の秋詣りにも多くのイタコが集まって、やはり「口寄せ」が行われます。

そもそも、恐山は比叡山、高野山とともに日本三大霊山に数えられ、862年(貞観4年)に慈覚大師によって開山されました。慈覚大師は、一羽の鵜に導かれて至ったこの地で一体の地蔵尊を刻んで祀ったといいます。このことから恐山信仰が始まったと伝えられ、天台宗の修行僧に利用されて栄えました。恐山とはいえ「山」という文字にあるような山はなく、もともと火山があったところにできたカルデラ湖や外輪山など火山の名残がみられる地形となっています。また、「恐」という文字にあるような怖い場所ではなく、霊場として優しく包まれるところなのです。

ご本尊の地蔵菩薩は菩提寺の山門をくぐった参道を行ったところにあります。常夜灯が並ぶ参道を進むと右に宿坊、左に本殿があり、カルデラ湖の宇曽利山湖近くには賽の河原や極楽浜の景色が一帯に広がります。噴気、噴泉現象がいたるところに見られ、一面に広がる硫黄に染まった石の原が荒涼とした風景を作っています。参拝者によってところどころに積まれた小石の山、卒塔婆は、死者への鎮魂の思いが感じられる独特な雰囲気です。この恐山にある温泉の湯小屋は、湧き出る温泉を利用した共同浴場でゆっくり体を癒すことができます。

恐山大祭に集まるイタコたち

恐山大祭の期間中の

イタコは、毎年の大祭にこの恐山に集まってきますが、これは特に昭和30年代からのことで、修業を積んだたくさんのイタコが青森県各地から集まりました。イタコは苦しい修行の結果、亡き人の言葉を伝える、占い・予言を行うなどの霊力を備えています。イタコのほとんどが生まれつき、または幼少時から盲目か半盲目の女性で生活の糧としてイタコになるべく、師匠のイタコへ弟子入りするのです。現在では、その後継者であるイタコの数は減ってしまいましたが、普段は青森県内各地を巡って「口寄せ」を行い、悩める人の問題を解決しています。恐山大祭には各地から集まってきて困った人の願いを「口寄せ」によって叶えてくれるのです。

イタコの霊術、「口寄せ」では死者や生きている人の霊を降ろして自らに取り憑かせ、相談者と対話することができます。話す人の癖などがそのまま再現されることから、そこには本当に目的の人が降霊していると理解できます。相談者は「口寄せ」によるこのような不思議な霊体験によって死者や生きている人の気持ちなど、情報を得ることができるのです。そして、問題を解決したり心の安定を取り戻したりするのです。