陰陽師と占い

陰陽師とは

陰陽師のイメージ

陰陽師とは万物は火・水・木・土・金の五行で形成されるという思想と暦や天文学を合わせ持ち、遷都や年中行事・政治への助言をする専門の官職としてその地位が確立されていました。特に有名なのは平安時代に活躍した陰陽師、安倍晴明です。天災や弔辞が続いていた桓武天皇時代から、怨霊を退治するために祈祷や呪術的な技法を取り入れるようになり、宇多天皇時代では朝廷や公家の生活にも密接に関わるようになっていたのです。

安倍晴明がここまで知られるようになったのは、当時の天文学を極めていたからとも言われていて、神階においては従四位下の官位を授けられていました。

その後は武家が中心の世の中になり、朝廷や公家の勢力が衰退したことから祭祀をのみを取り扱う身分となったため、戦国時代には官職としての立場を解かれていたようです。ただ、陰陽道を利用した城の建設や配置などは、江戸時代後期まで取り入れられていました。このように陰陽道は宮中祭祀や政治にまで深く関わっており、陰陽師はそれを操る特別な能力を持つ人として認められていたのです。

現代に存在する陰陽師

陰陽道は明治政府が取り入れたグレゴリオ暦によって消失し、六曜や節季などの注釈としてのみカレンダーやスケジュール帳に記載されていますが、現代に陰陽師が存在していないわけではありません。代々の遺伝的体質でその能力が引き継がれている人もいれば、自ら陰陽道を学んでその世界に足を踏み入れた人もいるのです。陰陽師と聞くとオカルト染みた占い師のようにイメージする人もいるかもしれませんが、現代に存在する陰陽師も科学では証明することのできない現象を鑑定したり、暗くて陰湿な空気が渦巻いている場所を浄化したり、安全を確保するための結界を張ったりと、陰陽道に沿った呪法や道具を使ってさまざまな事象を解決へと導いています。

一般的に陰陽師は霊能者と同じではと誤解されることもありますが、それは間違いです。確かに除霊や霊視などは霊能者も陰陽師も行うものですが、陰陽師は陰陽道に基づいた方法で実行するものなので、同じ問題を解決する場合でもそれに対応するための理論や手段には違いがあるのです。だからと言って霊能者よりも陰陽師の方が偉いとか、陰陽師よりも霊能者の方が素晴らしいという評価は存在しません。例えるなら西洋占星術も東洋占星術も姓名判断も、占いという同じ土俵の上でどれがいちばん優れた占術なのかを争わないのと同じです。

また、陰陽師になるためには公的な資格試験が存在するわけではありません。大学で陰陽道を学ぶわけではなく、陰陽師になるための専門機関があるわけでもありません。何かを販売するわけでもないし、自分の才能を何かの形で表現することもないのです。つまり職業としてはどこのカテゴリーにも当てはまりません。陰陽師自体は明治時代に廃止されたので、陰陽道を学んで修業を積むことでしか陰陽師としては名乗ることができないわけです。

そのため大々的に看板を掲げて仕事をしている人は少なく、どうやって陰陽師にコンタクトを取れば良いのかわからない人も多いでしょう。陰陽師になりたい人はどうすれば良いのか不安を持ってしまうかもしれませんが、そこはネットワークの発達している現代において心配する必要はありません。最近は個人や電話占いなどのWEBサイトに問い合わせ先が明記されていることから、今までよりもずっと身近に接することができるようになっています。陰陽師によるセミナーや講習会に参加することもできるので、問い合わせをしてみると良いでしょう。

正当な陰陽道の後継者としてさまざまな流派が存在していたり、実家が神社やお寺で代々その能力を継承していたりと、陰陽師とは言っても多様なスタイルが存在するので、どのような陰陽師を選べば自分の悩みに合っているのかは人によって違います。

陰陽師による占術

陰陽師は結界を張ったり除霊をしたりする霊能力の他に、占術によって相談者の鑑定も請け負っています。病気ではない体調不良。努力しているにも関わらず恵まれないご縁。なぜか自分に巡ってくる不幸な出来事など、陰陽道で使用されていた六壬(りくじん)と呼ばれる占術をベースに、人によっては九星気学や四柱推命と組み合わせて鑑定しています。

あまり馴染みのない六壬とは、黄道上にある太陽の位置を表す十二月将と時間の十二支から天地盤を作って、十二支の天地盤から四課(しか)を割り出す方法です。地球は1年かけて太陽の周りを公転しています。地軸を傾けて自転しながら回るために四季が存在しているのですが、黄道と呼ばれる通り道のどこに太陽が位置しているのか、その位置を雷の神様である勝先(しょうせん)や風の神様である功曹(こうそう)などの十二月将で表すのです。四課とは相談者に関係する冠婚葬祭や人生の転機を表す事柄のことを指します。

次に四課と天地盤から物事の始まり・経過・終わりを示す三伝(さんでん)を割り出したら、天地盤の十二支に十二天将を配置していきます。十二天将とは朱雀・玄武などの神獣のことで、いわゆる安倍晴明が式神として操っていたのがこの十二天将だと言われています。そして十二支の上に天からの味方が得られないと言われている空亡や、天の味方を得られる徳神などの吉凶時期を記します。

六壬は相談者から相談を受けた時間をベースにして、十二支と天文学の巡り合わせを天地盤の上に配置することで、物事の吉凶や恋愛・仕事・引っ越しなどさまざまな内容について対応することができるのです。

一般的な占星術などの書籍には記載されていないので、イメージが湧きにくいかもしれませんが、円盤の中に十二月将・十二支・十二天将などを書き込んでいきます。これらの巡り合せによって作られたものが天地盤で、天地盤とは天文学を取り入れた専門道具のことです。天盤を総合的に見て鑑定するわけですが、その占術の複雑さから陰陽道で使われる占術はとても難しく、相談者の問題を恐いくらいに当てるとも言われています。