生命の樹
「生命の樹」とはなにか
あまり耳に馴染みのない「生命の樹」という言葉ですが、そのイメージは社会現象にもなったアニメ「エヴァンゲリオン」や漫画「鋼の錬金術師」などの作中で登場しているため、一度は見たあるいは聞いたことがあるという方も意外と多いのではないでしょうか。この生命の樹(命の木)とは元々、旧約聖書の創世記の中で登場するエデンの園の中央に植えられた木のことで、この木の実を食べると神と同じ永遠の命を得ることができるとされているものです。カバラ(ユダヤ教伝統に基づいた神秘主義思想)においては「セフィロトの樹」と呼ばれており、こちらの呼び名で聞いたことがある方も多いかもしれません。
実のところ「生命の樹」は聖書の中に登場するだけではなく、世界各地の神話で様々な宗教的シンボルとして表されており、人類にとっては普遍的な象徴であると言えます。釈迦の菩提樹、北欧神話の世界樹、イスラム教の天井の樹などの多様な姿をとりますが、それらの樹は天と地を繋ぐ役目を持ち、私たちの内なる生命の象徴でもあり、スピリチュアル的に見れば魂を進化させるための地図のようなものでもあるのです。
カバラにおける「生命の樹」
生命の樹は形を変え様々な神話や宗教に登場していますが、その中で最も有名なものといえば、北欧神話の世界樹である「ユグドラシル」とカバラの「セフィロトの樹」になります。ここでは少しスピリチュアル色の高い、「セフィロトの樹」に視点をあててみたいと思います。
10個のセフィラと22個のパス
セフィロトの樹は生命の樹を独特な図式として表し、神や宇宙の法則、人類の霊的な進化を示したものになります。球である10個のセフィラと、それを繋ぐ22個のパスと呼ばれる小径(小道)とで構成された図には様々な意味が込められており、その図の中で私たち人間は一番下のセフィラに存在し、一番上にある神の意識を目指すとされています。決して真っ直ぐには上れない22のパスを通りながら、様々な経験を積むことにより神に近付いて行く。その道筋が1つの図の中に表現されています。
3つの柱と4つの世界
また、セフィロトの樹は3つの柱でも成り立っており、左が「峻厳(しゅんげん)の柱」、右が「慈悲の柱」、中央が「均衡の柱」と呼ばれています。非常に厳しいことを意味する言葉である「峻厳」を持つ「峻厳の柱」は女性性・受動的な力を表し、「慈悲の柱」は一見すると逆にも思える男性性・能動的な力を表します。女性には厳しさを、男性には慈悲を、それぞれ不足しがちなものを持たせることにより世界のバランスが保たれるという考え方から来ているのですが、まさにそのバランス重視の考え方により中央が「均衡の柱」と呼ばれるものになっています。
この柱を上がることにより「意識の次元」を越え神の領域まで辿り着けるとされており、その「意識の次元」に深く結び付くのが、セフィロトの樹の4つの世界の考え方です。神が上から創造した連続する4つの世界とは、以下のようになっています。
- アツィルト(流出界):神のいる完全な世界。神聖と火の属性を持つ。
- ブリアー(創造界):大天使の支配する、個性や他者の存在が生まれる世界。霊と風の属性を持つ。
- イェツィラー(形成界):天使の支配する、性別を持つ世界。「エデンの園」はこの領域に存在するとされ、魂と水の属性を持つ。
- アッシャー(物質界):魂が肉体と感情を持つ、人間の世界。悪魔も同時に存在する。体と地の属性を持つ。
この4つの世界は同時に重なり合いながら存在しているため、意識を拡大させることにより大天使や天使の住む他の世界からのメッセージを受け取ることが可能だと言われています。私たち人間のいるセフィラは4つ目のアッシャーに存在し、そこから生命の樹を登り高みを目指し始めるのです。
チャクラやタロットとの繋がり
生命の樹がどのようなものであるか理解が深まったところで、神話や宗教的な部分から少し外れ、実際に私たちの身近で関係しているものについても触れておきます。
1つはヨガにおけるチャクラ。前述したセフィラがチャクラと対応するとされ、第1のセフィラは頭頂のチャクラ、第2のセフィラは眉間のチャクラ、といったように考えられています。チャクラを整え開いて行くことは自らの心身にとってとても大事なことで、健康を保つだけでなく、ひいては心の安定や霊的な成長を促すものにも繋がって来るので、生命の樹との繋がりがあると言われればとても納得できます。
もう1つはタロット占い。タロットカードの大アルカナカードが22枚と、パスの数と同じであるところにも繋がりがあるのですが、タロットの占い自体に「生命の樹のスプレッド」と呼ばれるものがあります。カードを10枚、セフィラの形に配置して占う方法で、自己を見つめることや恋愛状況を占うことに使われることが多く、魂を読み解くスプレッドとも言われ、人の精神面と深く繋がったものになっています。