ジェラルド・クロワゼット

超能力で捜査を行うこと

ジェラルド・クロワゼットのイメージ

行方不明になったまま見つからない人の捜索や、犯人が特定できず未解決となりそうな事件に対し、人は科学の力をもって挑み、解決を試みます。近年では特にその科学の発展には目覚ましいものがあり、細かな遺留品の分析やプロファイリングなどの技術により、様々な難事件が解決されてきています。とは言え、それでもまだまだ未解決の事件があるのが実情で、科学だけでは解決できないこともあります。

現代ほど技術が発展していない昔は尚更、当時の捜査方法では解決できない難事件が沢山ありました。そのような中で、超常的な力に頼り事件を解決しようと、透視やサイコメトリーなどの超能力に頼ったやり方が注目されていた時代があります。ここではこのサイコメトリーにより数々の難事件を解決したサイコメトラー、ジェラルド・クロワゼット(ジェラール・クロワゼ)を取り上げていきます。

サイコメトラー、ジェラルド・クロワゼット

サイコメトラーとは、サイコメトリー(物体に残る人間の残留思念を読み取る)という超能力を持った人のことを言います。指輪や腕時計など、人が持っていたものからその持ち主がどのような人物であるか、またどのような思いを持っていたかなどがわかるとされており、犯罪に巻き込まれた被害者や犯人の遺留品から多くの情報を読み取り捜査に役立てることができます。

ジェラルド・クロワゼット(-)はそのようなサイコメトラーの1人で、特に行方不明者を超能力で探し出す分野では先駆者となった人物です。、クロワゼットはオランダのユトレヒト大学でウィルヘルム・H・C・テンヘフ教授が講演した超心理学に関する講演を聞き、その後自らが透視能力のテストを受け驚異の超能力を発揮したとされています。テンヘフ教授がクロワゼットを研究対象とすると同時に、彼自身も自らの力を役立てようとユトレヒト大学の傍に居を構えます。そうしてクロワゼットは、警察などから依頼を受け事件を解決するサイコメトラーとして活躍を始め、テンヘフ教授がその事件を記録していきました。

解決した事件について

ジェラルド・クロワゼットはサイコメトリーや透視の超能力を使って多くの事件を解決したと言われています。その中から、代表的な事件をいくつか紹介します。

1. 放火魔事件

、オランダのウオドリヘン地域で連続放火事件が起きました。この事件に対してクロワゼットは「放火魔は男だ。制服を着る仕事をしていて、アパートに住んでいる。そしてオモチャの飛行機となんらかの関係がある」と透視します。その後、実際に逮捕された犯人は警察官で模型飛行機を趣味としていました。このクロワゼットの証言はビデオに撮影されており、地元警察の署長によって調書に記され、更にはその署長の署名まで入っているとテンヘフ教授の事件記録が残っています。

2. 日本の少女行方不明事件

、日本に来日したクロワゼットは、放送のテレビ朝日の「水曜スペシャル」という番組において、当時千葉県で行方不明になっていた少女に関する透視を行い、それに基づき取材をしていた番組スタッフが彼の指摘した千葉県市原市のダム湖に浮かぶ少女の遺体を発見しました。当時遺体の映像がそのまま番組で流されるという衝撃的なことがありましたが、前日彼の透視した通りに事件が解決したという事実に変わりはなく、番組を見た人の間で大きな反響を呼びました。

3. ロンドン警視庁からの依頼

ロンドンのギャングであるジンジャー・マークスが行方不明になった事件で、ほぼ殺害されていることが確定しているもののどうしてもその死体がみつからず、クロワゼットがロンドン警視庁からの依頼を受け協力することに。クロワゼットは「死体は海の中に投げ込まれている」と言い、その場所まで指示しました。そしてロンドン警視庁が言われた通りの場所を捜索すると見事死体が発見され、事件が解決しました。

4. 銀行員一家惨殺事件

、オランダのヒルフェルスム市で銀行員の一家が惨殺され、当時の日本円にして約50万円が奪われるという事件が発生。事件の手掛かりは被害者の手に絡みついていた数本の糸のみで、おそらく犯人の衣服の糸であろうとされるものの、それ以外の手掛かりがまったく見当たりませんでした。警察の必死の捜査が続きましたが3年の月日が流れ、このまま迷宮入りかと思われた時に、遺族の希望でクロワゼットに調査依頼が入ります。

遺留品である数本の糸を見たクロワゼットは犯人の特徴と、現在の居住地を指摘。すぐさまそこに向かった警察が新たな捜査を行うと、彼の言う特徴とぴったりの犯人が発見され、遺族の遺恨を晴らすこととなりました。

事件解決の真偽

クロワゼットが解決したと言われる事件の、その的中率や真偽のほどはどうなのでしょうか。彼は本当に超能力を使い事件を解決してきたのか、疑わしくなるのが当然です。前編で取り上げた事件に置いてもその裏を探りながら、彼の失敗談も調べてみましょう。

1. 放火魔事件・テンヘフ教授の作り話

見事犯人の特徴を言い当て、そのクロワゼットの証言までビデオに収められているなど、一見確証の高そうな話ではありますが、後にこの事件の真相をジャーナリストのピート・ハイン・フーベンスが地元警察署の署長に会い調査しています。

フーベンスによると、署長が実際にクロワゼットと会ったのは事件が起きる2年前の。そして、事件について彼が語るテープは実在していたのですが、詳しく聞いてみたところ事実とまったく異なるものでした。クロワゼットは透視したとされている犯人の特徴である「制服」や「オモチャの飛行機」に関してはまったく語っておらず、それらはテンヘフ教授によって作られた話だったそうです。更には、彼の証言が調書に記された事実もなく、署長の署名などもありえないものだという証言を得ました。

2. 日本の少女行方不明事件・情報による推測

クロワゼットの透視により少女の遺体が発見されたとする事件ですが、彼がこの事件自体に興味を持ったのが放送前日、に日本で見た情報番組がきっかけだったとされています。通訳とともに番組を見て事前に情報を知っていたのであれば、超能力などを使わなくても遺体がダムにあることは予想ができることでした。

と言うのも、少女が行方不明になってから警察は様々な場所を捜索し、残すところは遺体発見現場であるダムのみで、そのダムは少女の両親が「あそこには遊びに行かない」と証言していたため捜索せずにいたのです。しかしながらすべてを探し終えた警察は、から、機動隊と付近住民160人の協力を得てダムの大捜索を予定しており、その直前にあたるに取材に入った番組スタッフが遺体を発見し、放送という形になりました。つまり、例えクロワゼットの証言がなくとも、その日に少女の遺体が発見されることは確実だったのです。もしクロワゼットがこの残された捜索場所がダムだけだということを事前に知っていたのであれば、超能力など使わずとも証言は可能になるということです。付け加えて、番組内ではこの事件以外にもクロワゼットは2つの事件を透視しましたが、完全に読みを外していました。

3. 透視、サイコメトリーのミス

クロワゼットが間違った証言をした事件として有名なものを挙げてみます。

  • オランダのヴィールデンに住む若い女性が帰宅中に襲われた事件で、テンヘフ教授の記録によれば、警察の依頼によってクロワゼットが捜査に協力。現場に残されたハンマーをサイコメトリーし犯人を捕まえたとされています。しかしこの事件を調査したウェールズ大学のC・E・ハンセル教授が実際にヴィールデン警察に問い合わせたところ、クロワゼットに捜査を依頼した事実はなく、被害者女性の親戚がクロワゼットに頼んだため事件に関わるようになっただけでした。そして犯人は警察が独自に逮捕し、サイコメトリーの詳細に関してもまったく異なっていました。
  • オーストリアのアデレード近郊にあるグレネルグ・ビーチから三人の幼い少女が行方不明になった事件がありました。すぐに地元警察が大掛かりな捜査を行うものの、目撃証言が少なく捜査は難航。この事件を聞きつけたクロワゼットの支持者が、オランダにいる彼にビーチの写真と雑誌や報道の記事を送ります。早速サイコメトリーを行い、クロワゼットは3人が既に殺害され埋められていると指摘し、その指示によって遺体を掘り起こす作業が行われますが、結局手がかりすら見つけられずに終わりました。この翌年、クロワゼットは雪辱を果たすべく再透視を行いますが、7000ドルもの費用を掛け指摘された場所を掘り返すも、これもまた何も見つからずに終わりました。

ジェラルド・クロワゼットは本当に超能力を持っていたのか

クロワゼットがサイコメトラーとして解決したとされる事件の記録のほとんどが、彼を研究対象として見ていたテンヘフ教授の記録によるもので、記録を詳細に調べた人々からは教授の虚偽が指摘されています。そのせいもあり、現在ではジェラルド・クロワゼットの超能力はまゆつばもので、彼のサイコメトリーによって事件が解決していたわけではないという説が主流になっています。しかしながら、たとえ偶然の域を出ないものであっても、彼の証言により解決したとされる事件は他にも存在しているため、クロワゼットを完全に否定できるものはなく、彼が本当にサイコメトラーとして解決した事件もあるという可能性は捨てきれません。