バフォメット

バフォメットとは

バフォメットのイメージ

バフォメットとは、キリスト教の悪魔黒ミサを司る存在のことを指します。両性具有であり、女性の胸、獣の足、鳥の羽根、黒山羊の頭を持つ異形の姿をしていると言われています。そのバフォメットの姿は19世紀に魔術師であり錬金術師でもあったエリファス・レヴィの描いた「メンデスのバフォメット」の絵が有名でしょう。また、タロットカードの大アルカナ15番の「悪魔」に描かれているのがバフォメットである、といった説もあります。

バフォメットの歴史

そもそも西欧における悪魔とは、この世ならざる異形の存在に対して使う言葉ではありません。異民族、異教徒へ向けられた差別からも、多くの悪魔が生まれている現実があります。それは「アンチ・ゴッド」的な観念で、差別による屈辱や残酷さを味わった者の復讐心や絶望が生んだ憎しみによる、神と相対する存在と言えましょう。

かつて、十字軍が聖地エルサレムの奪還へと駒を進める中、闘いの渦中にありながらもギリギリ均衡を維持していたキリスト教とイスラム教。しかし、十字軍が闘いに終止符を打つと、西欧はイスラム教との交流が途絶え、それまで長い闘いの苦しんだ西欧人はイスラム教への嫌悪を募らせます。14世紀になっても、西欧の中東やイスラム教への怒りは収まらず、フランスはキリスト教修道士によるテンプル騎士団を解散させました。テンプル騎士団は、エルサレム巡礼の道筋を作ってきたキリスト教の修道士の集まりにもかかわらず、彼らはフランス王の野心の餌食になったとされています。やがてテンプル騎士団はアンチ・キリスト、キリスト教会のデビルに象徴されることになり、ここで用いられた印が、バフォメットの山羊頭にも記されている五芒星になっています。

バフォメットの記録

11世紀~12世紀のラテン語の書簡にバフォメットの存在は記されており、これが最古の記録だと言われています。宗教的なひとつの主義、サタニズムにおいてもバフォメットは取り上げられることが多いです。サタニズムが悪魔崇拝、悪魔主義を語っているからですが、直接的な関連ではなく、エリファス・レヴィの描いた「メンデスのバフォメット」の影響が強いのではないかという説もあります。

には、アメリカはミシガン州デトロイトにおいて、バフォメットのブロンズ像(高さ2.7メートル)がお披露目されました。悪魔崇拝主義はいまだ根強く、このバフォメット像は彼らにとって御神体とも言われているのです。敵対する者同士の和解、差異を容認、賞賛するのが悪魔教です。人との違いを認めよと主張することは、ある意味アメリカの自由な精神を象徴でもあり、アンチ・キリストというより自由な信仰の象徴かもしれません。しかし、論争は絶えず起こっており、デトロイトの牧師の中には「邪悪だ」と非難し、バフォメット像の反対集会も行われています。