エドワード・ケリー

エドワード・ケリーのイメージ

エドワード・ケリーは、にイギリスで生まれた水晶球透視者です。一般的にはエドワード・ケリーとして知られていますが、エドワード・タルボットと言う別名でも活動していたとされてもいます。イギリスでは著名な錬金術師として名を残していますが、一方でその素性は野心に満ちた詐欺師の一面もあったと伝えられてもいます。ケリーはオックスフォードで学び、ラテン語とギリシャ語に堪能であったそうですが、当時から詐欺まがいの行為に手を染めていたとのことで、文書偽造の罪によって両耳をそぎ落とされる罰を受けたほどに、問題行動が多い人物であったとされています。

やがてケリーはジョン・ディーと知り合います。ジョン・ディーはケンブリッジ大学出身の宮廷占星術師であり、数学者でありました。錬金術や交霊術に興味があったディーは、水晶を透視して天使と対話ができる霊能力があるケリーに興味を抱き接近しました。ケリーはその期待に応えて、たびたび水晶を使って天使を召喚。交霊術ができないディーはこれに夢中になりました。ケリーが天使を召喚し、その言葉をディーに伝え、ディーがそれを記すという作業をスタートさせたのです。このときに生まれたのが、天使の言葉である「エノク語」です。

その一方、2人は貴族をパトロンに持とうと考えて行動し、実際に錬金術や天使との交信を見せることで、数人のパトロンを獲得することに成功しました。しかし、ケリーは天使の召喚よりも錬金術に次第に力を入れるようになり、ディーに天使は悪霊だと信じさせようとするようになります。これは貴族からの援助を、すべて自身の興味の対象である錬金術に注ぎたいというケリーの画策でした。このことをきっかけに、ケリーとディーは共同作業の関係を解消、ディーは別の霊能者と交霊術を続けていくのですが、ケリーは金にならない交霊術よりも、錬金術で金を作りだすことで貴族を喜ばせ、贅沢な生活を支えてもらうことを選んだのです。もっとも、ケリーはたびたび錬金術に失敗してしまい、そのとき仕えていたルドルフ皇帝を怒らせてしまい投獄されたのです。結局はその後世に出ることなく、牢獄で人生の最期を迎えたとされています。

ケリーが聞いた天使の言葉「エノク語」は天使の言語だとされていますが、後の研究でこれはケリーが勝手に作り上げた造語であり、ねつ造であるとの説が有力になりました。なぜならエノク語は、英語の文法にあまりにも類似し過ぎている点が挙げられています。しかし完全に否定されたわけではありません。たとえば、オーストラリアの言語学者であるドナルド・レイコックはエノク語を肯定しています。エノク語には、我々の言葉には決して現れない音声の特徴があり、これはケリーが天使のメッセージを受信したことを示しているのだ、と語っています。賛否両論を巻き起こしたエドワード・ケリーのエノク語。ケリーの没後も語り継がれて、イギリスの「黄金の夜明け団」によりエノク魔術として甦るのはもう少し後のことになります。