ネクロマンサーズ・マニュアル

中世の魔術師たちのバイブル

ネクロマンサーズ・マニュアルのイメージ

ネクロマンサーズ・マニュアルとは、その名の通り、死者や霊を介する魔術師たち(necromancer)が読むバイブルのことです。15世紀に制作されたグリモワール(魔導書)で、ドイツ・ミュンヘンのバイエルン州立図書館に所蔵されていることから、別名「ミュンヘン降霊術手引書」とも呼ばれます。これらはすべて通称で、正式には手稿「CLM849」と言います。すべてラテン語で記されており、手稿の内容はリチャード・キークヘファーが1998年に出版した『禁断の儀式、15世紀の降霊術師のマニュアル』に収録されました。

何が書かれているのか

手稿には、主に2つのことが書かれています。まず「悪魔学」について。悪魔学とは、悪魔や悪霊、魔物について研究する学問で、どのような悪魔がいるのかという説明や分類、またそれらに関する考察をまとめたものです。「魔神学」や「鬼神学」とも言います。

そして、ネクロマンサーズ・マニュアルには「降霊術」についての詳細も書かれています。この手稿によると、死者の霊や悪魔を召喚するためには、3つのものが必要だと言います。魔法陣、祈祷文(呪文)、生け贄です。魔法陣は、悪魔などの邪悪なものを呼び出す際に、術者を守る結界の役割を果たします。祈祷文は、よこしまな考えを抱く悪魔に対し、権力を示すための特別な言葉。悪魔の力を抑制するなど、いわゆる言霊のような力が作用します。そして生け贄は、召喚したものに捧げる報酬です。簡易的な儀式の場合は何らかの品で済ませることもあるようですが、供物を集めるのに苦労すれば苦労するほど儀式の質が高まるということで、生け贄には動物の肉や人肉が望ましいとされています。

手稿には、こうした悪魔や儀式の詳細以外にも、おぞましい幻覚を見せるための呪文について記された箇所などもありました。この手稿は、ネクロマンサーたちにとって有益な情報にあふれた、まさにマニュアルという名がふさわしい書物であったことがうかがえます。