恐山イタコと沖縄ユタ

恐山イタコと沖縄ユタのイメージ

イタコについては、こちらのイタコのページでも紹介しておりますが、口寄せ(亡くなった人の霊魂を自分の体に憑依させること)という霊能力を用いて相談者にアドバイスをする人です。「イタコ」とは、アイヌ語で「神がこう仰った」という意味をはじめ、「斎(いつき=神聖な場所)の巫女(みこ)」の転訛など諸説あるとされています。そして「地獄を思わせる景観」の恐山で催される恐山大祭というものと関係しているのが大きな特徴です。こちらのイベントの一つに「イタコの口寄せ」があるのです。マスコミなどの情報によって恐山=イタコという大衆イメージが強く、そして同時にイタコといえば恐山という認識も固まっていったようです。

「口寄せ」によって伝えるメッセージや目的は多様です。亡くなった人と生きている人の仲立ちになって死者からのメッセージを伝える「仏口(ほとけくち)」や、自らをトランス状態にして占いや予言をすることはもちろん、祈祷の目的としても幅広く活用されています。「口寄せ」をする霊能者巫女はさほど珍しくはないものの、イタコは東北地方に伝わる職種で、全国的に広く分布しているわけではありません。また、口寄せの方法はさまざまですが、呪文を唱えながら数珠や太鼓、弓などを激しく鳴らし、霊を降ろすものがおおよそ共通するイメージです。

憑依体質の人は、いろいろなエネルギーや霊の力に感化しやすいため、その様子によっては、感情が表情に出やすくなってしまうという特徴があります。また、霊に憑依されている人は、自分の感情をコントロールできずに、常に余裕のない表情をしていることが多いのです。その場のちょっとした状況の変化によって、顔つきが変わってしまうのです。それも、人が変わったかのように、瞬時に豹変します。多重人格者といわれる人の中にも、実際は憑依体質の人が多く見受けられます。もともと持っている自分の人格の他に、とり憑いた霊によって変わる人格がその人の中に存在してしまうからなのです。

イタコになるには呪文を覚えたり、祭文を習得するために厳しい修行をしたりしなければなりません。そしてある程度の技術を身につけた後で神社にこもり実際の仕事に就くとされています。また、盲目や弱視の女性であるのも特徴の一つ。その理由としては、弱視の人の生活の糧とされたことや、仕事柄その神秘的な面にマッチする理由としても挙げられます。

一時期、オカルトブームもあってイタコという人々が広く知られるようになりましたが、現在の日本はライフスタイルや価値観が大きく変わり、徐々にイタコの絶対数も少なくなっていきました。現役のイタコはほとんどが高齢者であり、後継者不足も懸念されています。そのため、伝統文化の継承や民俗文化学といった意味でも重要視されているのです。

他の占いと同様に、本当に霊的な能力を持つ人(あるいは霊的な能力を身につけた人)は少なからず存在するものの、科学的・理論的な実証が困難なためにデタラメなことをいったり、ビジネスとして悪用したりしている人がいるのも事実。

しかしながら、青森県の「津軽のイタコの習俗」と秋田県の「羽後のイタコの習俗」は選択無形民俗文化財として、国からもその価値を認定されています。そのような背景や歴史的価値、伝統文化としての位置づけを再認識し、ある種のトレンドとは異なるものとして接するべきだという側面もあるのです。

沖縄ユタについて

上記で述べた恐山イタコと同様に、「沖縄ユタ」と呼ばれる者もいます。口寄せはしないまでも、自らをトランス状態にして神事や祈祷、占いをする点については同じ。「イタコ」も「ユタ」も語源は同じだと指摘する学説もあるようです。

イタコとの最大の違いは、沖縄という地域特性や歴史上の成立過程とも関わっている点でしょう。地元民から伝統的に確固たる信頼を得ており、精神的な支柱となるケースも多々あるようです。医者のアドバイスで効果がなくとも、ユタの助言によって心身の安定や健康を得られたという人もいるほど。沖縄では「医者半分、ユタ半分」という言葉があるように、島全体で重要な存在であることがわかるのです。

また、ユタになる方法という点でも大きな違いがあるとされています。イタコの多くが盲目や弱視といった先天的なハンディキャップによって、生計を立てるべく弟子入りして修行を始めます。これに対してユタのほとんどが突然、神からの啓示を受けたような状態(病や事件)に苦しみ、それを克服した上で自身の使命を強く認識するといったケースがほとんど。現在でもそのようなオカルト的雰囲気を残しながらも、無宗教化や戒律のなさから自由度が高いのも事実で、若い女性では副業でユタとしての活動をしている人も多いとされています。

イタコとユタは、どちらも希少な霊能力を用いて人々の助けとなりうるシャーマンです。他の霊能力や占いと同じように、過剰な期待を求めるのはよいことではありません。しかし、不安や悩みの解決が見つからないときや、人生の大きな決断をする際のヒントにしてみてもよいでしょう。

良いイタコ、ユタとの出逢いもひとつの運命です。チャンスがあれば、じっくりとていねいに話をしてみてください。不思議なチカラやアドバイスをもとに、迷いの日々から解放されることをお祈りしています。